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東京競売ウォッチ

2010年8月9日

第52回中古マンションに一服感

 活況だった中古マンション市場に、この5月以降、やや一服感が出てきたようだ。秋口以降の値ごろ感のある新築マンションの発売を期待して、消費者が様子見に入った面もあるのだろう。こういう状況では、販売価格と実際の成約価格にギャップが生じてくる。

 7月15日開札で一番人気であったのは、有楽町線「月島」駅徒歩8分に立地する「晴海アイランドトリトンスクエアビュータワー」であった。該当する部屋は50階建ての8階部分で、北西向きの専有面積20坪弱の2LDKの部屋である。このマンションの売却基準価額は1,554万円であったが、これに対し入札が45本集まり、最高価4,138万円にて、業者が次順位の個人入札を凌いで落札していった。専有面積坪単価は210万円弱の水準であるが、これから登録免許税などの取得費用や、明渡しや内装関係の費用を考慮すれば、再販価格は専有面積坪単価230万円を超えていかないと、採算は厳しかろう。

 ちなみに、レインズにおける同マンションの成約価格を調べてみると、5月に6階と9階の2件があり、それぞれ専有面積坪単価が約190万円、及び約220万円である。

 眺望や日当たりなどの条件で、一概には比較できないが、この成約データからでは、先の落札価格では、利益を上げるにはきついように思える。

 ただ、同マンションの現在の売り出し価格は専有面積坪単価240万円を超えるものが相当数あり、それを考えると、利益確保の可能性もありそうだ。しかし、これらの物件も今後販売期間が長期化すれば、価格改定(値下げ)に向かうだろう。

 中古マンション再販事業における高値仕入れが限界に近づいているかもしれない。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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