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東京競売ウォッチ

2015年12月15日

第303回 上板橋の土地3物件に応札なし

 このところの東京地裁はほぼ完売の形で推移してきたが、11月19日開札については、4物件に入札がなく特別売却に回った。

 1物件はマンションであったが、その他3物件は土地(更地)であった。3物件の土地はいずれも同じ地域で、東武東上線「上板橋」駅徒歩12分に立地している。

 23区内の土地で応札がないのが珍しく、目を引かれた。3物件それぞれ約13坪の広さで、売却基準価額は276万円から559万円であった。この地域の土地の1坪あたりの単価は100万円を下ることはまずないと思われるが、本件は40万円前後とかなり安かった。

 その原因はこれらの土地の接道条件、位置、形状にある。まず3物件ともに近接する道路から見て崖下に存しており、建築確認を取得するには売却対象外で現状擁壁になっている土地を介し、当該道路に接続せねばならない(これには対象外土地の所有者の承諾が必要である)。さらにこの点では水道、下水、ガスなどのインフラについても障害をもたらしている。それは、各インフラについての管の引込みについても、対象外土地の所有者の承諾を得ることが別途必要になること、および引込みにあたっては、ポンプ設置など特段の工事が必要になることである。

 さらに加えて、既存の擁壁については老朽化が顕著であり、建物建築の場合は擁壁工事を再度行わねばならない、ということもありそうだ。安い価格で仕入れても、以上のような付帯費用が膨れ、結果として採算が合わないということで、応札がなかったのだろう。

 しかし、驚いたことに開札日からほどなくして、3物件のうち2物件が特別売却で売れていった。こういった土地でも商品化にチャレンジする会社はあるようだ。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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