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2023年08月22日

第662回 マンション相続税評価改訂と競落価格

 タワーマンションによる相続税評価額の見直しが来年から行われる。現在国税庁が予定している改訂の計算式は複雑であるが、ポイントとしては築年が浅く、マンションの総階数と対象の部屋の所在階数が高く、敷地の持分が小さいほど現在の計算式に対し、より高く評価されるということである。

 7月26日開札で一番人気であったのは、東武伊勢崎線「曳舟」駅徒歩約4分に立地する築21年の専有面積約22坪の3LDKの部屋であった。このマンションの階数は15階あり、対象の部屋がある階数は12階である。また敷地の持分から土地持分面積は約5.1坪である。これだけのデータがあれば、評価の「乖離率」が計算でき、その結果この部屋は2.57であった。従来の相続税評価額は、土地持分面積に対する路線価による土地評価に建物の固定資産税評価額を加えたものであるが、この部屋について計算すると約1640万円であった。これに乖離率を乗じさらに0.6を乗じたものが新評価額となる。つまり1640万円×2.57×0.6で約2530万円が新評価額と思われ、従来評価額の1.5倍強となるわけである。

 さて入札の結果は売却基準価額3487万円に対し入札21本が入り、最高価5888万円にて競落されていった。売却基準価額は新相続税評価額の約1.4倍に相当し、競落価格は新相続税評価額の約2.3倍に相当する水準である。また市場価格を競落価格の1割増しの約6500万円と考えればそれは新相続税評価額の約2.5倍となる。よってこのマンションを購入した人は相続税評価額をおよそ6割圧縮できることとなる。

 以上の計算結果から、マンションによる相続税圧縮効果は一定程度落ちるものの、まだまだあると考えられよう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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