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東京競売ウォッチ

2012年1月31日

第121回 2011年の市場分析(下)

 前回に続き、2011年の東京地裁競売市場の分析を行いたい。


 落札率には影響が見られなかった震災であるが、入札価格の設定には変化があったようだ。表1は2010年と、2011年の落札価格の売却基準価額に対する上乗せ率を比較したものであるが、ご覧のとおり全体的に上乗せ率は低下した。

 とくに、マンションに関しては10%近く低下している。やはり震災後、入札者は全体として、再販価格を慎重に予想し、入札したようだ。


 さて、表2は競落マンションの落札価格の売却基準価額に対する上乗せ率を、新・旧耐震構造別に分けて表示したものである。そして、それを震災前の1年間(2010年4月~2011年3月まで)と震災後の9カ月間(2011年3~12月まで)で比較している。

 これを見ると、震災前については新・旧耐震構造ほぼ同程度の上乗せ率であったものが、震災以降は明らかに旧耐震構造マンションについて上乗せ率が新耐震構造物件に比して急減(50・8%減)している。やはり地震への警戒感か、古い物件への入札価格設定は、より抑制的になったようだ。

 また、タワーマンションの入札価格にも影響があった。競落価格の売却基準価額への上乗せ率が、新しいタワーマンションでも20~30%と平均を大きく下回る競落例が散見された。再販業者が低めの入札価格を設定した結果、実需の個人に競落されるケースも見られた。これらは液状化への警戒感の表れであろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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