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東京競売ウォッチ

2012年5月8日

第135回 借地権の居宅兼共同住宅

 4月12日開札で、築50年を超える古い借地権の居宅兼共同住宅に9本に入札があった。

 この物件は都営三田線「志村坂上」駅徒歩2分に立地し、借地面積約38坪で、建物鉄筋コンクリート造3階建で、延べ70坪ある。2階、3階の4部屋を賃貸し、1階に借地人が居住する形である。

 この物件の売却基準価額は1,345万円であったが、この金額で落とせれば、賃貸にした場合の年収が400万円以上見込めるので、地主への名義変更料の負担を考慮しても年20%超の利回りが得られる。かなり古い建物であっても、この高利回りや、駅から近いことなどを鑑みて、多くの入札があったのだろう。

 結果として、最高価2,800万円にて個人が落札したが、この個人は当該物件の地主であった。地主さんとしては、これまでに任意売却での購入など勧められていたことも考えられるが、結局競売での取得となったようだ。おそらく任意売却で取得するよりも、廉価で取得できたことであろう。

 このように、借地権付建物の競売物件については、地主が個人の場合については、当該物件に入札してくるケースがある。地主は当然、事情がよくわかっていて取得に関して有利である。また、完全所有権になることで、これまで底地として、換金性が低かった土地が、競落によって売却しやすい資産に変わって、価値が増大する。

 地主がお寺などである場合は、まず競売に参加してくることはないと思われるが、個人地主である場合は、地主の入札の可能性があると考えておくべきである。

 この日は同じく借地権付建物で、大田区の築40年近い延床面積が約18坪という小さな戸建ても競売対象であったが、こちらは地主がお寺であり、入札は5本あったが、競落したのは再販業者であった。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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