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東京競売ウォッチ

2025年07月01日

第750回 超億ション価格に天井感か

 目を疑うような、高値になっている都心のマンションであるが、とりわけ港区は別格であり、さらに大手企業の分譲マンションは価値が高い。6月11日開札では東京メトロ日比谷線「広尾」駅徒歩約9分で麻布学園に近い好立地に建つ「グランドメゾン西麻布」の1部屋が対象となった。

 このマンション築15年が経過しており専有面積は約30坪の2LDKである。占有者は買受人に対抗できない、明渡6か月猶予の法人であるので、リフォームしての再販向け商品化はしやすい。この物件の売却基準価額は1億5040万円であったが、これに対し入札は8本で、最高価2億8000万円にて競落されていった。この競落価格は専有面積坪単価にして約930万円である。西麻布立地で築20年以内では、最近では専有面積坪単価1800万円程度の成約が散見されるが、それを考えるとやや控えめな競落価格にも感じた。

 ただこのマンションは積水ハウス分譲の高級グレードであるものの、所在階が2階と低層部分であったことが影響したのかもしれない。このマンションは19階建であるが、そのうち2階に位置していることで評価書では個別格差として10%の減額を施している。この格差率はこのマンションの基準階を9階と考えて算出したと書かれていた。ただ実際市場では減額の幅はもっと大きいように思う。

 それにしても坪単価1000万円未満なのはここ最近の状況からすると高くないようにも思える。入札本数も二桁に届いていないのも意外に感じた。超高額物件に対する仕入れに業者は慎重になっているのではないだろうか。価格天井感が出てきているのかもしれない。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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