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東京競売ウォッチ

2013年8月27日

第194回 収益目的の1棟マンション

 現在、収益目的の1棟マンションやアパートが一般不動産市場では需要が高く、物件不足の様相である。

 競売市場では、そもそも1棟マンションやアパートの対象物件が少なくなっている。そういった中でも競売対象が出れば、やはり入札本数が多く集まり、競落水準も高い。

 8月1日開札では、東京メトロ有楽町線「千川」駅徒歩約6分に立地する1棟マンションに30本の入札が集まり、かつ売却基準価額の2倍近い価格で落札された。その物件は、土地は約101坪、建物は鉄筋コンクリート造4階建てで、延床面積172坪強という規模である。間取りはワンルーム、1DKを中心に23室からなり、年収は約1,800万円見込める。

 ところで、この物件は担保不動産収益執行がなされていて、建物はこの収益執行管理人である執行官が賃貸等の管理を行っている。担保不動産収益執行とは、債権者がその建物から発生する賃料等を所有者に代わり、債権回収に充当すべく収受するものである。

 これと同じように、抵当権者の物上代位に基づく賃料差押で回収を図る場合もある。ただし、担保収益執行による回収の方が賃借人の入れ替えに管理人の意思で対応できることや、同じく建物の修繕、保守などについても管理人が主体的に実施できる。したがって、賃料等の回収および不動産の価値保全面でも物上代位による賃料差押より、債権者にとって優位と言えよう。さらに入札者にとっても物件管理について安心感があるなどで、入札しやすい。

 ちなみに、本物件は売却基準価額1億1,197万円に対し落札価格は2億40万円強であった。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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