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東京競売ウォッチ

2019年7月16日

第470回 明渡猶予の占有者が高級物件落札!!

 東京地裁もここ最近は対象物件がかなり少なくなっている。7月4日開札では27物件であったが、7月18日開札は20物件未満の予定である。おそらくは任意売却による処理が多くなっているのが減少の大きな原因かと思われる。

 平成初期のバブル崩壊時の競売物件は多くの債権者の抵当権が1物件に設定されていたが、ここ最近では2重3重の抵当権設定が少なく、任意売却が進みやすいのではないだろうか。ただ任売がうまく成立せず入札対象になる場合もある。

 この日港区のお台場に所在する高級タワーマンションが対象になった。この物件は築13年で33階建ての最上階に位置する専有面積約33坪の住戸とそれに隣接する専有面積約36坪の部屋2部屋の1括売却である。この2部屋は隔壁に扉を設置し往来できるようになっている。この部屋を占有しているのは賃借人(法人)で、明渡猶予6か月が与えられている。

 この物件の売却基準価額は1億8764万円であったが、これに入札が7本あり、最高価2億7000万円にて、先の明渡猶予対象者である法人の代表者が落札していった。このケースなど占有者が購入したのであるから本来は任意売却にて売買されても良いように思う。しかし債権者の抵当権抹消金額について合意できなかった等の原因で入札に及んだようだ。またこの2部屋は管理規約に違背して隔壁を取り除いており、この点も任意売却の障害になった可能性がある。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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