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東京競売ウォッチ

2013年3月5日

第171回 新耐震基準外のワンルーム

 国土交通省は建築物の耐震化加速のための予算を、今年度補正予算で積み増した。これにより耐震診断のための助成金の増加を行う。さらに加えて、耐震改修促進法を改正し、耐震化の協力義務を建物所有者に課したい意向だ。今後は、いわゆる新耐震基準以前の多くの建築物については、耐震化のコスト発生が見込まれる。

 また、新耐震基準外の建物は、その取得のための融資もつきにくいこともある。したがって、競売市場においても新耐震基準外建物は、入札が比較的少ない。

 しかし、2月12日開札においては、築40年目、正に新耐震基準に満たない築古のワンルームマンションが1番人気となった。

 その物件は東京メトロ有楽町線「月島」駅徒歩約3分に立地する、専有面積約7.6坪の部屋である。この物件の売却基準価額は160万円であったが、これに対し30本の入札があり、最高価380万円にて個人が落札していった。

 なお、この物件は所有者占有であり、室内はだいぶ汚れている様子で、賃貸物件とするには、改装費用が必要と思わる。また滞納管理費も約75万円あるので、落札者の取得総コストは500万円を上回ると考えられる。

 一方で、見込まれる賃貸収入は年約90万円だが、諸経費控除後の純収益は年約70万円程度であろう。この収益を前提にすれば、取得コストに対し、年14~15%ほどの利回りが期待できる。新耐震基準外建物でも、この程度の利回りが見込めれば、個人の現金買いニーズが十分にあると言うことだろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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