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スペシャリストの眼

東京競売ウォッチ

2010年2月15日

第29回 人気エリアの“わけあり”物件

 不動産を取り巻く環境として、ここ数年大きく変わってきたのは遵法性という観点ではないだろうか。建築確認を取っているか、または再建築が可能であるのか、それにアスベストの使用の有無など、法律に則って建築されているか否かで、市場価値が大いに相異するようになってきた。

 これは、不動産融資する銀行などが融資それ自体を行うか否かの根本の問題にまでなっている。

 1月28日開札で目を引いた落札結果の中に、東急世田谷線「松蔭神社前」駅徒歩3分に立地する共同住宅兼事務所があった。この物件は約70坪の敷地と、その上の築3.5年の鉄骨造で延約58坪の建物からなる。1Kが8戸、これに事務所1戸で年収1,000万円は見込めるだろう。

 人気エリアの立地で、築浅の共同住宅であれば、人気が出るはずであるが、結果は売却基準価額7,081万円に対し、入札はわずか1本で、落札価格も売却基準価額を下回る6,600万円で個人が落札していった。

 これは一つに本物件がいわゆる敷地延長の土地(旗竿地)に建っており、しかも間口が約2.6mしかないため、東京都安全条例の定めから、同様の建物を合法的に再建築できないことがある。

 違法建築物への応札はやはり少ないということの例でもあるが、実はこの物件についてはもう一つ問題がある。それは機械式駐車場が建物に隣接して本物件敷地内に設置されていることである。機械式駐車場は動産であり、今般の競売の対象ではない。これを排除しようとすれば、引渡命令を発令し、示談が成立しなければ明渡しの強制執行であるが、現実には駐車している自動車のあることから、いきなりに設備を解体することもできそうにない。占有排除はかなり難題であろう。

 いかに人気エリアでも、こういった難題が重なれば多くの人は入札を躊躇する。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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