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東京競売ウォッチ

2018年5月22日

第414回 滞納管理費控除に明らかな誤り!

 マンションで競落されない物件はほとんど見かけぬ昨今であるが、4月24日開札で1件競落されず特別売却に回った物件があった。その物件は東武伊勢崎線「西新井」駅徒歩約15分に立地する専有面積約6.7坪の1DKマンションであった。この物件築28年と新しくはないが、新耐震基準で、かつ所有者居住であるあるので引渡命令が取得できる物件である。しかし入札は無かった。これは売却基準価額404万円、買受可能価額323.2万円が採算に合う水準で無かったことによると考えられる。

 この物件の評価書を見ると、積算価格と収益還元価格双方を求め正常市場価格を520万円としている。ここまでは理解できる。正常価格から競売による減価(20%)を施しているのも通常であるが、そこから控除すべき滞納管理費等について問題がある。現況調査報告書によれば本物件の滞納管理費等は昨年の10月時点で280万円を超えているとある。にもかかわらず評価書の減価は正常価格の3%である15万円強に過ぎない。従って売却基準価額が本来200万円未満で設定されるべきところ、その2倍以上になってしまったのである。これでは応札はないだろう。過去の取引事例を見ても専有面積坪単価は100万円程度で、670万円くらいであるから、全く割安感はない。(むしろ市場より高い)期間入札が始まるまでにこの点、債権者など気が付かなかったのであろうか。債権者も競落されなければ債権回収ができないのであるからチェックすべきだと思う。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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