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東京競売ウォッチ

2022年1月11日

第584回 2021年東京地裁競売市場の総括!!

 昨年2021年は東京地裁本庁の競売開札対象物件は表1のとおり24.19%増と大きく増加した。これは1昨年裁判所が約4ヶ月に亘って休んでいたことで対象物件を大きく減らしていたことがその理由である。ただ2年前2019年より対象物件が50件少なくなっていることから裁判所が休んでいた分の競売件数が上乗せされることはなく、むしろ減少した。

 この理由は政府のコロナ禍に伴う経営支援策にある。特にゼロゼロ融資(無利子、無担保融資)は企業のキャッシュフローを高め、返済遅延が起こらない状況を作った。結果として21年の全国の倒産件数が6000件を下回る公算で、そうとなれば、これは1966年以来55年ぶりの低水準とのことである。競売件数が少なくなって当然である。

 一方で競落率は前年比0.26%増と僅かながら上昇しており競落競争が1昨年よりさらに激しさを増した感がある。さらに表2の売却基準価額に対する落札価格の上乗せ率を見ると昨年からは競落物件全体では5.6%上昇している。特に東京地裁本庁において競落物件数の70%超を占めるマンションの競落価格上昇が顕著であった。平均で売却基準価額の約52%上乗せでの競落ということはほぼエンドユーザー購入価格に近いで競落価格と言える。競売が安いとは少なくともマンションについては言えない状況である。


山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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