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東京競売ウォッチ

2016年8月30日

第336回 銀座の中銀カプセルタワービル

 競売入札に参加するには原則、売却基準価額の20%の入札保証金が必要であり、もし代金納付を競落後に行わない場合、この保証金は返還されない。そのため、とりあえず入札しておこうという入札を防止することができている。しかし、これが極めて少額であれば話は別になる。

 今年3月10日開札で中央区銀座8丁目に立地する「中銀カプセルタワービル」が対象になり、競落された。その時の競落結果は本欄でも紹介したが、売却基準価額1万円に対し、入札41本が集まり、最高価477万円で落札された。

 しかし、8月4日開札で再びこの同じ物件が競売対象になったのである。おそらく競落会社は競落後、この物件の改修について詳細に検討し、また管理組合と滞納管理費などの件で話をしたのであろう。その結果、競落者はこの物件を再販売することで期待したマージンを獲得できないと判断し、代金納付をしなかったものと考えられる。

 この物件の入札保証金がわずか2,000円であるため、ある意味、気軽に代金不納付ができる。代金不納付の場合のペナルティは、同一物件が再び入札対象となった場合について、入札参加ができないというものである。しかし、その他の物件入札に関し何ら影響はない。事実上、代金不納付によるダメージは、この物件に関してはほとんどないと言ってよい。

 さて、今回はというと、入札本数は16本で競落価格は401万円強であった。競落者は個人であったが、今回は代金納付がなされるであろうか。興味が持たれる。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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