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東京競売ウォッチ

2018年4月3日

第409回 無断譲渡で地主解除意思の借地権付建物が競売

 借地権付建物の売買には地主の譲渡承諾が必要になる、無断譲渡は土地賃貸借契約の解除権を地主に生じさせる。3月13日開札では東京メトロ日比谷線「八丁堀」駅徒歩約3分に立地する借地権付建物が競売対象になったが、この物件がまさに地主の無断譲渡の物件であった。借地権対象土地は約13坪、建物は築11年、木造3階建で2LDK、延床面積は約24坪の物件である。ただ無断譲渡と言っても現在占有しているのは建物前所有者であって、所有権を移転したのは、金銭借り入れの担保(譲渡担保?)として移転したものと前所有者が主張している。あくまで借地人は前所有者というのである。しかし、地主は無断譲渡として、土地賃貸借契約解除を主張している。

 さてこういった場合競落者は借地権を得られるだろうか。ちなみにこれまでの間地代の滞納などはなく、借地人の義務は履行されている。裁判所の評価書ではこの地主の賃借権解除主張については係争減価として30%を計上している。ただ地代長期滞納など信頼関係の崩壊までには至っていないので、おそらくは地主との土地賃貸借契約締結が任意交渉で決裂しても裁判所に借地権譲受許可の申立(非訟事件)を行えば、譲渡承諾料(本件ではおそらく約190万円)支払条件付で許可が出ると思われる。さて、この物件の売却基準価額は1266万円であったが、入札6本が入り3636万円と大幅な上乗せ率で競落された。立地条件が良く建物も比較的新しいところで高上乗せ率であったのだろう。あと競落者の心配すべきことは地主の介入権による借地権の買戻しであろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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