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東京競売ウォッチ

2023年06月06日

第652回 喪失可能性ありの借地権物件に

 競売市場にしかあり得ない物件として、その代表格が借地権付建物のうち、その借地権に争いがあるものである。その中でも地主との間で契約解除がなされている物件は、まず一般市場には登場することはない。

 5月17日開札では、小田急小田原線「梅が丘」駅徒歩約2分に立地する築約65年経過した木造2階建の借地権付建物が対象になった。土地は借地面積約30坪、建物は延床面積約36坪で1階が所有者占有で、2階が賃貸されている。さて戸建は地主が世田谷随一の大地主である豪徳寺である。そしてこの借地権、既に契約解除が豪徳寺からなされ、現建物所有者はそれを承知していると、現況調査報告書に記載されている。ただこれはあくまで豪徳寺側の主張のため、物件明細書には敷地利用権不明の扱いになっている。そのためか、評価書においては借地権の係争減価(争いがある場合のディスカウント)が正常価格の30%に設定されている。ただ仮に競落した場合、場合によっては借地権の存在が否定されるリスクがあり、係争減価30%は小さい感じがする。しかし、実際はこの係争減価を前提に売却基準価額1424万円に対し2本の入札があり、最高価1801万円で法人が落札していった。

 競落者は豪徳寺との事前の協議があっての入札であったのではないだろうか。そういった事前協議などがなくて、こういう物件に売却基準価額を上回っての入札はなかなかできないように思う。もしそういった事前協議等がない入札であったとしたらかなり果敢な入札である。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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