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東京競売ウォッチ

2018年12月4日

第441回 世田谷好立地マンション入札1本!!

 先週は、一等地への入札が高水準で競落された事例を紹介したが、同じ開札日(11月8日)で世田谷、馬事公苑近接の人気住宅地のマンションが売却基準価額以下、それもほぼ買受可能価額で競落されていった。

 このマンションは確かに小田急線「千歳烏山」駅徒歩約17分とやや足回りに劣るものの専有面積は40坪を超える3LDKで、その広さにおいては希少性がある。しかし、売却基準価額4704万円のところ入札は僅か1本で、しかも競落価格は売却基準価額の2割引の買受可能価額を7万円強だけ上回る3770万円強で競落されていった。

 この物件の評価書を見ると、このマンションの敷地利用権の積算価格が5500万円を上回っている。またこのマンションの土地部分は約22.1坪に相当するが、路線価から相続税評価額を算出すると土地が3360万円強になる。これだけの土地評価があるものの前述の競落価格なのは、建物が築50年と古いからである。評価書において積算価格は1050万円強に評価されてはいるものの、市場ではそこまでの評価はされないであろう。

 この建物、固定資産税評価額はおそらくこの積算価格の6割程度の約600万円だろうと推測されるが、そうなると相続税評価額は土地建物合計で4000万円超となり、競落価格はそれを下回ることになる。本来不動産投資特に都内では相続税評価の圧縮になるものだが、老朽化マンションは本例のように、その逆(相続税評価額の方が高い)になることがあるようだ。今後もこういったケースは増加するように思う。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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