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東京競売ウォッチ

2024年11月26日

第722回 孤独死マンションが基準価額以下の落札

 近時古い住宅での孤独死が問題になっている。身寄りのない単身者の孤独死は発見まで時間が掛かるケースも多々ある。

 11月6日開札で対象となったマンションはまさに今年の1~2月ごろに賃借人である占有者が孤独死しており、3月になってやっと賃借人の関係者からの申出で警察により死亡が確認されている。所有者が差押えされ競売に掛かっていることで、賃借人からの賃料延滞督促が行われなかったことも発見が遅れた理由ではないだろうか。現状、遺体は運び出されてるものの、動産は放置されたままで、特殊清掃もなされていない状況である。臭気もきつく、体液なども確認できる旨記録にある。

 そのマンションは築50年を経過する団地マンションの1部屋で専有面積が7坪強のワンルームである。この物件の売却基準価額は549万円であったが、これに対し入札が4本あり、最高価456万円にて個人が落札していった。売却基準価額より低く、買受可能価額を20万円に満たない小さな上乗せ額で競落された。

 一つ疑問なのが、この物件の評価書においてこういった孤独死且つ発見が遅れ、臭気が漂う状況であるのにも拘わらず、それによる減額評価が行われていないことである。競落者としては現況調査報告書に記載があるので、特殊清掃などのコストを勘案しての入札価格にはしていたのだろう。ただ売却基準価額設定においてはこういった場合は入札者への警告の意味でも一定の減価がなされるべきではなかろうか。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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