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東京競売ウォッチ

2023年12月05日

第677回 都心の古家は競売で処理

 11月22日開札では今般建替えにより閉館となっている国立劇場の近隣の1戸建てが対象になった。東京メトロ「半蔵門」駅から徒歩約4分に立地する。古家となったこの家は相続で2名共有である。今般この共有者の一人が相手の共有者に対し、共有物分割請求権を行使し、形式競売にて換金する運びになった。この建物には共有者ではない兄弟が居住していたが、先に逝去され、それを機に換金することになったようだが、相続人間での協議が纏まらず競売になったのだろう。

 対象物件の土地は南側幅員8mの公道に面した約22坪である。この土地の正面路線価は1坪約500万円で、総額は1億1000万円であったが、設定された売却基準価額は1億16900万円と相続税評価と大きく変わらなかった。そこにこの日1番の31本の入札が集まり、最高価3億1800万円にて落札されていった。売却基準価額の2.7倍を超える水準であった。

 競落者は1坪約1445万円での落札であったが、これに古家の解体や測量費用を考えても1坪1500万円未満で仕上がりそうだ。すでに空き家状態でもあるので占有問題も無いため事業化も早かろう。

 さて、都心の古家がポツポツと見られるが、その中には相続が発生し、相続人かその関係者が生活を続けているケースがある。この場合高齢となった占有者が存命中は物件処分ができないということも多いかと思われる。そんな都心の古家が本件のように競売で換金決着される場合は多いのである。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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