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東京競売ウォッチ

2014年7月8日

第237回 国が底地権者の借地権付建物

 競売において、借地権付建物には入札が入りにくい傾向がある。売却基準価額は低いのだが、必要な地主からの譲渡承諾料は不確定であるし、また再販商品として売りにくいので、業者も敬遠しがちである。

 しかし、底地権者が国である場合は例外と言えるだろう。国が底地権者であれば、名義変更料はあらかじめ予算が立つ。

 さらに東京の場合、国の所有する底地を、競落した借地権付建物の代金納付と同時購入であれば、名義変更料もかからない扱いである。したがって所有権の土地付建物を購入するのと、さして変わりがない。

 底地の売買価格も評価書に記載される底地評価額で見積れば不足はないだろう。さらに、こういった底地は国が相続税の物納を受けたものであり、土地境界が明確であるという利点もある。この点では、むしろ所有権の競売戸建てより良い場合もあろう。もちろん借地権者ごとに分筆できてもいるので、他の借地権者が同一敷地にいることはない。

 さて6月12日開札では、JR総武線「新小岩」駅徒歩約9分に立地する借地権付建物に23本もの入札が集まった。競落したのは建売り業者であったが、この物件の底地権者が国であった。敷地は約27坪あり、建物は築50年を超える木造の古家で、解体費用分マイナス評価と言ってよい。

 売却基準価額は793万円であったが、競落されたのは2,486万円で、売却基準価額の3倍を超える水準である。正面路線価から推量する底地売買価格は700~800万円と思われるので、底借合わせて競落者の土地の仕入れ価格は1坪120万円程度とみられる。

 建売用地として決して安くは思えないが、昨今の用地不足状況では、あり得る価格なのだろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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