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東京競売ウォッチ

2015年6月2日

第278回 訳有り物件でも大量入札22本

 競売市場の活発化で、なかなか思うような競落ができない業者が多いが、そうなると借地権付建物にも触手を伸ばさざるを得ない。しかし、借地権付建物については所有権土地と相違して競落後、土地所有者の譲渡承諾を必要とする。中には土地所有者が、競売に付された借地人に対し、土地賃貸借契約の解除意向を示しているケースもある。

 4月23日競落物件のうち、東京メトロ丸ノ内線「新大塚」駅徒歩約4分に立地する木造アパートが借地権付建物であった。この物件は土地所有者が地代不払いによる契約解除の通知を内容証明書にて、借地人に行っている。これに対し、本物件の債権者は地代の代払い許可を裁判所から得たようだが、土地所有者が受け取りを拒否したため、地代の供託が裁判所に行われている。

 このように借地権について争いがある状態であることから、本物件の評価書では借地権の20%(約560万円)を係争減価として行っている。その他、名義変更料負担分として借地権の10%(約280万円)を減じており、売却基準価額は1,103万円である。これに対し22本もの入札があり、最高価2,220万円にて競落されていった。

 本物件は床面積約7坪の1DKの部屋4戸から成っており、月額地代約3万円を考慮しても年収300万円程度は確保されるだろう。単純に競落価格をベースにすれば年13%程度の利回りは得られそうだ。

 しかし、土地所有者への名義変更料負担や建物の改修コストを考えると、年10%くらいに落ち着きそうだ。さらに場合によっては、地主は断固、名義変更に応じない可能性もある。この場合、裁判所に土地所有者に代わって譲渡許可を出してもらうことはできる。しかし、このときは土地所有者の介入権行使により、競落価格より低額で借地権を買い取られてしまうリスクも伴う。

 こんな訳有り物件でも大量入札となる現在の競売市場である。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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