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東京競売ウォッチ

2012年7月3日

第142回 渋谷駅歩7分のワンルーム

 ヒカリエのオープンなどで、渋谷の街は今賑わっている。そんな中、渋谷駅徒歩約7分のワンルームマンションが、6月7日開札対象になった。専有面積約6.5坪で、現在法人に事務所として賃貸中である。賃料は月額10万円であるので、年120万円、管理費等や固定資産税の負担を考慮しても、実年収95万円程度はある。

 これに対し、売却基準価額は688万円であったが、結果、応札はなく、特別売却に回っていった。

 滞納管理費もとくにないとの執行官調査であるので、本物件は売却基準価額の8割の買受可能価額550.4万円でも購入希望者がなかったことになる。利回りからすれば、年17%強という高利回りであるのに、である。これは1つに本物件が昭和53年築と、旧耐震の古い物件であったこともあろう。

 しかし、一番の理由は、周辺環境にあるように思える。所在するのは渋谷区道玄坂であり、周辺にはラブホテルや風俗店が散在する地域である。こういった物件は、やはりテナントが特殊であるケースも多いため、投資物件として敬遠されるようだ。

 この日、同じ渋谷区のワンルームの事務所(専有面積約11坪)が競落された。その物件は先の道玄坂の物件より築年が10年以上古い昭和42年築であるが、それでも入札は10本あって、売却基準価額1,164万円に対し、大きく上乗せの1,818万円にて落ちている。

 これは、この物件が神宮前2丁目で、キラー通りに面するという、いい環境に立地するマンションであるからであろう。

 同じ日に新宿区百人町に立地する区分所有の事務所が開札になったが、これも入札はわずか1本で、買受可能価額に少し乗せただけで競落された。やはり、この結果も立地する周辺の環境が大きく影響しているのだろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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