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東京競売ウォッチ

2016年4月5日

第317回 六町駅徒歩20分のマンション

 今年に入ってほぼ完売で、昨年から引き続き活況である。また対象物件数の減少も続いていて、3月24日は開札予定であったが、取消・中止となった。物件数減少の影響であろう。

 この活況で、競落価格の水準は上がり、上乗せ率も上昇傾向にはある。しかし、その中で若干の変化も感じる例もある。それは中古マンション、それも新耐震基準以降の物件でありながら、売却基準価額を下回る価格で競落された事例が生じたことである。

 3月10日開札では、つくばエクスプレス「六町」駅徒歩約20分に立地する、専有面積約14.6坪の2LDKの部屋である。売却基準価額は271万円であるが、これに対し入札が2本、競落価格は221万円強で、買受可能価額(売却基準価額の8割)に若干乗せただけの競落価額であった。

 このマンションには滞納管理費等が約230万円あるが、これを考慮しても競落水準は450万円強であり、専有面積坪単価は30万円強とかなり安い感じがする。この物件はつくばエクスプレスが開通するまでは、最寄駅がかなり遠かったが、つくばエクスプレス開業後は徒歩20分とは言え、最寄駅まで歩ける距離となった。

 また、このつくばエクスプレスは開業にあたり、沿線の土地価格上昇なども話題になったものである。しかし、マンションに関しては駅からの距離があるものについては売却しにくいようだ。レインズの在庫登録状況を見てみると、同じ「六町」駅徒歩20分前後のマンションの売り出し価格が築10年に満たない物件でも、専有面積坪単価が70万円台である。

 再販業者としては、内部のリニューアル工事も必要であるし、強気の入札価格設定をなかなかしにくい状況だったのだと思われる。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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