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東京競売ウォッチ

2018年6月5日

第416回 敷金控除で大型ビルの売却基準価額4万円!!

 競売の場合、賃借権が(根)抵当権設定前に存するものは、競落者が最先の賃借権として継承することになる。この場合賃借人が所有者に差し入れた敷金等の返還債務について競落人が継承することになる。

 5月24日開札では承継する敷金額が30億円超という高額であり、これにより売却基準価額が4万円になったビルが開札対象になった。そのビルは平成6年3月に竣工し、JR総武線「亀戸」駅徒歩約5分に立地する鉄骨鉄筋コンクリート造14階建てで、延床面積は約1320坪である。幅員40mの国道14号線に面した敷地は面積が280坪弱ある。ただ今回の競売対象は土地については約9割が件外土地、すなわち対象外で、建物も1階、地下1階の部分(区分登記されている)約6割も対象外である。そういった権利関係であるが、住友不動産が一括借り上げしており、敷金を前述のとおり30億8000万円差し入れている。支払われる賃料は転借人への転借賃料から算出されるが、およそ年間で1億1000万円程度にはなるようだ。

 評価書においてこの物件の正常価格の評価額は16億円で、年7%利回りであるが、承継敷金が前述のように30億超なので差し引きではマイナスになってしまうため、1不動産登記単位1万円で4万円の売却基準価額に設定された。結果は入札7本で競落価格は30億8000万円と売却基準価額の何と7.7万倍の競落価格となった。承継敷金を考慮すると62億円弱の購入コストである。競落者は採算をどのように考えたのかは伺いしれない。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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