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東京競売ウォッチ

2016年11月15日

第347回 最先の賃借権者が占有するマンション

 マンションの売買において、ワンルームマンションは賃借人が付いていた方が売却しやすい。賃料目的の購入であるからである。しかし、それ以外のマンションでは、賃借人付のいわゆるオーナーチェンジ物件は価格が伸びない。

 競売では、抵当権等設定前に設定された賃借権者が占有しているマンションで、ワンルーム以外のものがある。こういった物件は、原則賃借権を承継せねばならず、やはり再販業者としては入札をためらうことになる。

 10月27日開札では、都営大江戸線「新江古田」駅徒歩約11分に立地する専有面積約13坪の1LDKのマンションが対象になった。このマンションは最先の賃借権者が占有していて、月額賃料は13・5万円強である。コストとしては、管理費等が1カ月約1.8万円で、固定資産税等が年10万円強である。

 この物件の売却基準価額が1,575万円であるので、この価格で競落できれば、実質利回り年8%程度の水準を得られ、投資用としては良いように思う。しかし、競落されたのは2,556万円であり、投資用としては魅力が低い水準だ。競落したのは再販業者であったが、おそらく占有者を交渉して出すか、それが叶わねば、賃借権者の都合で退去するのを待ち、空室になったところで売却する考えであろう。

 築浅で好立地、さらには大きなルーフバルコニーが付いているなどの好条件のマンションでありながら入札が10本にとどまった。これはこの最先の賃借権があったからであろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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