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東京競売ウォッチ

2010年10月25日

第63回金融緩和で活発化するか

 日銀がゼロ金利政策とともに、REITを含めた投資信託の買い取りを行うという異例の施策に打ってでた。資産デフレ阻止への強い意思の表われかと思う。

 競売市場では、相変わらず中古マンションを中心とした個人実需向け住宅への大量入札が活発であるが、これも金融緩和を背景とした住宅ローンの貸出が活発化していることに起因している。今後、中古住宅だけではなく、商業用不動産などの取引が活発化するか否かが注目される。

 そんな中、10月7日開札で千代田線「赤坂」駅徒歩2分に立地する商業ビルと、その敷地が競売対象になった。

 敷地は約114坪、建物は昭和38年築の7階建てで、延床面積が約650坪ある。建物の賃借人を退去させ、それを取り壊す事業計画であったが、その途中で所有者が破綻し競売となった。

 ところで、この物件は昨年12月8日に1回競売に付されている。このとき売却基準価額6億7,280万円に対し3本の入札があり、最高価8億5,896万円にて落札された。しかし、当時の落札者が代金を納付しなかったためか、このたび再度入札となったようだ。

 今回の売却基準価額は前回同様の6億7,280万円であったが、最高価は7億5,109万円で、前回より約1億円の低下である。

 前回の落札者が代金を納付しなかったのは、1つには、一部残る賃借人の明渡しコストや時間について見込み違いがあって、購入を断念した可能性が考えられる。しかし一番可能性が高い理由は、代金納付にあたっての資金調達が首尾良く進まなかったことにあるのではないだろうか。

 不動産開発に対する業者への融資は依然厳しい状況のようだ。この辺の金融環境が、このほどの金融緩和施策によってどうなっていくのか、商業用不動産の取引活発化に大いに関係してくるので、気になるところだ。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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