リアナビ

スペシャリストの眼

東京競売ウォッチ

2009年9月7日

第7回 マンション管理組合が競売申立て

 本年は昨年の1.5倍を上回るペースで対象物件が増加しているが、それに伴い入札がなく、 特別売却に回る物件も多くなっている。

 特別売却に回る物件の多くは権利関係などに問題があるものなどであるが、 8月27日において特別売却となった物件中、ちょっと変わったものがあった。

 それは練馬区の築41年が経過したマンションの1階の区分所有の事務所である。 専有面積が約98坪と広い部屋で、売却基準価額は4,192万円であった。

 この物件が珍しいのは、この物件の申立人である。それはこのマンションの管理組合であった。 管理組合が滞納管理費等の先取特権に基づき競売を申立てたのである。

 そもそもこの物件は、約2年前に競売(特別売却)によって現所有者がおそらく当時の 買受可能価額約1,930万円にて買受けたものである。しかし、この買受人は約1,800万円にも上る 滞納管理費等を負担してでは、再販もしくは賃貸によって採算がとれる見込みが立たず、 管理組合に支払わないでいたところ、管理組合の競売申立てに至った。

 したがって、今回の売却基準価額は通常、滞納管理費等を控除して設定するところ、 それがされていない。売却代金の配当として管理組合がその分収受するからである。

 また申立てられた現所有者も、もし競落されるなら競落金から滞納管理費等の配当分を 差し引いた分の配当を受けられることになるので、競落はある意味望むところであったのではなかろうか。 しかし、結果は不落札で残念な結果となってしまった。今後どうなるのか、興味が持たれる。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


BackNumber


Copyright (c) 2009 MERCURY Inc.All rights reserved.