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東京競売ウォッチ

2023年09月19日

第666回 住吉の1R投資早期破綻

 近時インフレ社会になってきたこともあり、1Rマンション投資を勧める会社の営業は盛んである。サラリーマンに対し新築物件の販売を行う会社は購入のためのローンをセットして営業する。サラリーマンは中古物件を自分で金融機関を見つけ資金調達して購入するのに比して簡単であることから1R投資は新築物件が中心になっている。

 そして購入後のローン返済は受け取り家賃でかなり賄えるので大抵の場合テナントがつけば返済が滞ることはないはずである。しかし、たまに購入後さほどの時間が経たないうちにローン破綻し競売になるケースも見かける。

 8月30日開札では東京メトロ半蔵門線「住吉」駅徒歩約10分に立地する1Rマンションが開札対象となった。専有面積は7坪弱で、現賃借人は共益費込みで月額10.7万円を支払っている。この状況であればローン返済は延滞しないようにも思われるが、今回競売になっている。しかもこの物件は2021年8月の竣工であるので築後わずか1年半強での破綻である。現況調査報告書を見ると、管理費等の支払いは2022年2月から滞っていることから、購入引き渡し後半年程度で破綻状態になったようだ。どうも販売時にかなり返済計画に余裕のない顧客に販売したように思う。なおこの物件の売却基準価額は2184万円であったが、これに対し入札は9本集まり、最高価3212万円にて競落された。なおこの競落金額は登記情報を見ると債務者の債務額とほぼ同額であることからローン会社はほぼ債権を回収できたようだ。しかし債務者はこの競売で短期間のうちに金融機関の与信を失う結果となった。ゆとりのない返済計画では決して購入すべきではない。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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