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東京競売ウォッチ

2017年4月18日

第365回 新桜台駅3分の一棟アパート

 「一棟もの」という言い方は不動産業界、不動産投資家の間では定着している。特に「一棟もの」と呼ばれる多くは共同住宅であろう。その中には木造、鉄骨造、そして鉄筋コンクリート造などがあるが、木造一棟物であるアパートは競売市場においてこのところ数を相当減らしている。

 そんな中3月9日開札では木造の一棟ものが一番人気となった。

 その物件は西武有楽町線「新桜台」駅徒歩約3分に立地する1K13戸、2DK1戸の全14戸から成るアパートであった。

 土地は南側で幅員約5.4mの公道に面する約105坪である。建物は築7年の2階建で、延床面積約97坪である。

 このアパートは一括貸しをしていて、賃料は月額85万円強、年1025万円弱である。この物件の売却基準価額は1億507万円で、これに対し入札は36本入り、最高価2億155万円で個人が落札していった。

 売却基準価額の2倍近い競落価格であり、表面利回りは年約5%の水準である。管理費や固定資産税等を考慮すれば年4%の半ばとなる。

 一方この物件の積算価格を考え、まずは土地の時価を計算してみる。正面路線価は1㎡あたり33万円であるところから、更地時価評価を1㎡あたり41万円強(路線価÷0.8)とすれば総額で1億4000万円になる。これに評価書上の建物評価額約4000万円を加えると、約1億8000万円が積算評価と考えられる。

 この物件は敷地に余裕をもってアパートが建設されているので、利回りが低いが、積算価格がその分高く、銀行評価は出やすいのかもしれない。個人落札であったのもこの辺にも理由がありそうだ。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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