リアナビ

スペシャリストの眼

東京競売ウォッチ

2017年7月11日

第376回 田園調布の借地権一戸建てが売却基準価額の約2.3倍で落札

 借地権付建物が競売不動産には一般市場に比してよく見られる。これは任意売却にて債務処理をしようとしても、地主の譲渡承諾がうまく得られず、競売に移行してしまうケースが多いためである。この譲渡承諾が得られにくい背景には、借地権付建物は築年が古い建物であるため、転得者が建物の建替え前提であることもある。つまり、地主は借地権の譲渡承諾とともに建替え承諾を売買にあたり要請されるわけで、その承諾条件(承諾料額)の調整が多くの場合で難しいのである。

 6月22日開札では大田区田園調布本町の借地権付建物が対象であった。借地権土地の広さは154坪で、その上に木造2階建て(一部未登記)で、延床面積約64坪の建物が、競売対象外の小さな別棟とともに建っている。この物件の売却基準価額は5245万円であったが、これに対し入札は7本あり、最高価12000万円にて法人が落札した。何と売却基準価額の2.28倍という高上乗せ率であった。

 この対象の建物は、昭和13年に建てられた古家であり、害獣なども棲むなど、管理状況が悪い。おそらく競落者は、現建物の取り壊しが前提であろうと思われる。従って地主(本件については個人)との交渉如何で、事業採算が大きく変動するだろう。おそらくは競落者は事前に地主とこの辺の条件についてある程度話し済みであるか、もしくは地主の代理としての入札であったかもしれない。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


BackNumber


Copyright (c) 2009 MERCURY Inc.All rights reserved.