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東京競売ウォッチ

2010年11月8日

第65回借地権の1棟マンション

 日本の株価は一向に浮上することがなく、個人の資産運用も難しい局面にある。そんな時代背景から、収益不動産への関心が高まってはいる。ただ賃料が低落傾向にあり、収益についての不安感があることから、購入を躊躇する向きもある。

 そんな中、10月28日開札では借地権の1棟マンションに、この日2番目にあたる31本もの大量入札があったのに目を引かれた。

 この物件は池袋駅から10分ほどの立地。借地面積が30坪強、建物は鉄筋コンクリート造4階建てで、1Kから2Kの間取りの部屋8部屋からなる。築22年ほどであるが、現物は管理状況が悪く、築年以上に老朽化している感じを受ける。そんな現況であるため、賃貸稼働中なのは半分以下と見られる。

 ただ、手直し工事を施し、賃貸稼動させれば年収770万円ほどは見込めそうだ。地代や公租公課を差し引いた実質賃料は700万円程度と思われる。

 この物件の売却基準価額は2,409万円であったが、これに対し競落された価格は4,319万円であった。競落したのは個人であり、次順位入札者も個人であった。

 借地権物件であるので、競落後は地主(この物件の場合は神社)に名義書換料の支払いを要す(評価書での算定では380万円ほど)。また、改修工事費用もまとまった金額が必要だあろう。したがって、購入にあたっての付帯費用は1,000万円以上予算立てしたいところである。

 以上から、今回の落札水準は総取得コスト(約5.300万円)に対し、年利回り13%程度であったと思われる。賃貸市場が低調とは言え、これくらいの利回りが望めるということであれば、個人の触手が伸びるのだろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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