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東京競売ウォッチ

2017年8月29日

第382回 朽ち果てた田園調布土地は任意売却?

 8月3日開札で、田園調布で106坪強の土地が対象になって目を引いた。その土地は東急東横線「田園調布」駅徒歩約8分に立地し、その土地上には、競売対象外の古家が存在する。ただし、この建物は競売対象外であり、且つ借地権などの敷地利用権は付与されていない。(ちなみにこの建物の所有者は土地所有者と同じである。)従って競落者は競落後その建物の除去をしなければいけない。

 この場合敷地利用権が無いので、競落者は当然建物収去と土地明渡しを請求できる。しかし、建物の占有者排除の場合と違って「引渡命令」では強制執行はできない。法的に行おうとすれば、建物収去土地明渡訴訟を所有者に提起しなければならない。この土地は東側で幅員7.2mの公道に面する整形地であり、その点においては価値が高いと思われるが、先述の障害がある。そんなわけでこの建物収去についてのマイナス評価を正常評価額の40%、金額にして8000万円近く評価書でみており、結果として売却基準価額は8917万円であった。

 さていくらで競落されるか注目していたが、結果としては「延期」という理由で開札対象にならなかった。この「延期」というのは、開札日前日までに抵当権抹消が間に合わないものの、任意売却が成立したケースである。買い手は決まっていて、おそらくは建物所有者の建物収去について話が纏まったものと思われる。東京地裁ではこのように任意売却が成立している場合で、開札日前日までに抵当権抹消が間に合わぬ場合、「取下げ」ではなく「延期」という理由で開札を回避するのである。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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