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東京競売ウォッチ

2013年11月12日

第205回 上野駅歩6分199室のホテル

 10月17日開札では、朝鮮総連本部ビルのほか、もう一つ大型の開札物件があった。

 それは、客室199室のホテルであった。JR山手線「上野」駅徒歩約6分に立地し、敷地が約145.5坪、建物が築3年弱で鉄筋コンクリート造、延床面積約1,060坪である。

 この敷地の路線価は1坪約250万円であるので、公示地価ベースでは1坪320万円程度かと推量される。

 一方で建物は、再調達価格を考えると、9億円弱と踏める。以上から、このホテルの積算評価額は13億円程度となる。

 これに対し売却基準価額は6億9,893万円と、かなり割り引かれている。これは評価書上、3割の競売減価に加え、ホテルという特殊用途であることから、通常の共同住宅やビルより2割差し引かれて計算されていることによる。

 しかし、実際の競落結果は入札19本が集まり、最高価約22億円と売却基準価額の3倍以上で競落された。競落したのはホテル運営会社であった。ホテルであるがゆえに、逆に競落水準が上がったようにも思える。

 仮にこの建物をワンルームマンション約200戸のマンションとすれば、月額1室5万円として、年額1.2億円の賃収になり、競落価格に対して表面利回りは年約5.5%とあまり魅力的ではない。

 続いてオフィスビルと考えると、賃貸面積は約800坪で月額1坪1.5万円とすれば、年額1.4億円強で、表面利回りは年約6.5%になり、空室率など考慮すると、これもまた利益率が決して高いとは思えない。ホテルであるがゆえにオペレーション次第で、マンションやオフィスビルである場合をはるかに凌ぐ利益を上げられるのであろう。

 いずれにしろホテル運営の実態を知らなければ、入札価格を設定できない物件である。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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