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東京競売ウォッチ

2011年4月4日

第85回練馬の介護付老人ホーム

 3月24日開札は東北関東大震災後の最初の入札締め切り(3月17日)の分である。震災や原発のショックが入札本数等にどれくらい影響するか注目された。

 結果として後記のとおり、落札率が100%完売であったのには驚かされた。また、競争状況も落札1物件あたりの入札本数が約9.9本と、前回(3月10日開札)より1本強低下したものの、さほどの影響はなく、積極的な入札姿勢が継続されている感じを受ける。

 そんな中、この日は練馬区の介護付老人ホームに売却基準価額4億7,800万円のところ、入札本数4本が集まり、最高価5億1,000万円強で落札された。

 事件記録を見てみると、この施設は所有者から運営事業者が賃借し、それを老人に転貸する形式になっている。そして運営事業者は、転借人である各入居者から500万円程度の預託金と、5年分の前払い賃料を預かっている。

 さて、ここで問題なのが、この運営事業者の賃借権が抵当権に後れており、買受人に対抗できないことである。具体的には買受人が代金を納付してから6カ月間の明渡猶予期間が与えられるが、買受人から明渡しを請求されれば、明渡しに応じざるを得ず、この場合、転借人も結果として退去を迫られることになる。

 ただ、運営事業者の賃料が年間7,000万円を超えるところから、買受人が当該運営事業者に賃貸し続ける場合も考えられるが、どちらにしろ入居者は不安を覚えていることであろう。

 老人ホームのリスクは運営事業者の破綻だけではなく、その物件所有者の破綻にもあるようだ。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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