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東京競売ウォッチ

2013年3月19日

第173回 激しくなった用地確保競争

 アベノミクス効果で景気浮揚がなるとすれば、いよいよ来年には8%への消費税増税がなされることになる。住宅業界は消費税駆け込み需要を見据え、品揃えをしようと、準備をしているところが多い。建売業界や、マンション業界も用地確保競争が激しくなっているようだ。

 2月21日開札で、京浜急行本線「雑色」駅徒歩約11分の土地建物が売却基準価額の2倍を優に超える水準で競落されていったのに目を引かれた。

 この物件、土地が約96坪で、北側で幅員約7mの公道に約9m接道し、西側では位置指定道路に約26m接している。そして、この土地上に延床面積90坪超の築30年の工場・事務所・居宅が建っている。

 北側の公道の路線価は1坪約88万円で、土地の路線価評価総額は約8,500万円である。

 以上の条件で、売却基準価額は4,384万円であったが、これに対し、入札16本が入り、最高価9,586万円にて事業者が落札していった。

 この落札価格は、建物評価を考慮せず、路線価の約1.13倍に相当する。

 対売却基準価額では約2.2倍の水準で、大きな上乗せ率に映る。ただ、この土地はきれいに3宅地の建売用地に分割が可能である。事業者にとって、ロスが少ない、理想的地形であると言えよう。

 そんな条件ゆえ、建売事業者などが強気の入札を試みたものと思われる。

 ただし、この土地上の建物は板金工場などとして使用されていたようで、土壌汚染が生じる可能性がある。また、工場の躯体にはアスベストが使用されている可能性も高く、競落後のコスト上昇要因を抱えている。

 それを見越した上で先の落札価格であるところからも、建売用地の取得難の状況が窺える。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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