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東京競売ウォッチ

2025年12月09日

第771回 ヌ事件全て開札無し

 競売不動産にはその発生の由来は様々である。その中で多くを占めるのが、住宅ローンを始めとする不動産担保融資の延滞債権由来の担保権(抵当権など)の実行に基づくものである。この競売はケ事件と示される。このケ事件には共有相続人間の不動産処分協議が纏まらずに裁判を経由して行われる競売(形式競売)もある。ただこれらケ事件も売却の公告がなされ、競売入札期間が締め切り後開札を迎えるまでの間に任意売却などで取下げなどが行われ、競売市場から消えていくものも全体の1割~2割はある。

 一方ケ事件とは異なり、裁判の判決等により不動産が差し押さえられた結果競売に付される競売はヌ事件と示される。そしてこのヌ事件競売は、その取下げなどで競売市場から消える割合が、ケ事件の2倍程度になっている。

 11月19日開札ではヌ事件が3件あったが、その3件のうち2件は取下げ、残る1件も変更ということで、全てがこの日の開札対象から外れた。このうち1件は文京区の人気エリアのマンションであったが、登記情報から察するに離婚による財産分与に纏わる争いを由来とする競売であった。おそらくは価格高騰のエリアでもあり、任意売却によって競売より高く売却できる見込みということで、当事者の売却合意がなされたのだろう。

 このようにヌ事件については、特に価格が高目と思われる物件に関しては当事者合意が進みやすい。従って開札日直前の取下げが多いので、入札者はなるべく入札締切に近い期日に取下げが無いか確認した上で入札することをお勧めする。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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