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東京競売ウォッチ

2015年11月24日

第300回 田端の借地権付区分所有店舗

 個人投資家の競売参加が多いのはワンルームマンションを始めとする賃料収入目的の投資物件である。これは住宅ローン利用前提の実需住宅購入希望者は、競売に参加しにくく、個人入札は現金を動かせる人が主であるためだ。またその中でも銀行評価が出にくい特殊物件は、さらに個人競落が多くなる。

 10月22日開札では、借地権付区分建物で店舗となっている物件を個人が落札していった。その物件はJR山手線「田端」駅徒歩約9分に立地する築31年で専有面積が約11・5坪ある。現状、焼肉店に賃貸されている。

 賃料は記録によれば月額15万円である。管理費等、地代及び固定資産税等の負担を控除したネット収入は年間約150万円と見られる。一方でこの物件の売却基準価額は318万円であるので、売却基準価額をベースとすれば、年利回りが47%強というかなり高い水準になる。

 結果は入札16本が集まり、最高価1999万円で個人が落札した。売却基準価額の実に6倍以上という破格の上乗せ率である。競落者は地主に支払う名義変更料(推定約140万円)を加え、約2150万円程度が取得費となるが、それでも現況水準で賃貸できれば年7%利回りできる計算ではある。

 借地権付建物で、区分所有店舗、かつこの物件については、登記上の建物種類が店舗ではなく事務所になっている。こういった特殊物件はまさに現金買いが前提になろう。それにしても高上乗せの落札に驚かされた。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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