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東京競売ウォッチ

2017年3月7日

第360回 14物件が取下げで対象28物件

 2月9日開札では、対象物件が28物件と、30物件を下回った。1回の開札で、これほど対象物件が少ないのは、記憶にない。この日少なかったのは、取下げが多かったことも、その要因である。対象物件数の半分にあたる14物件が取下げになったのである。

 その中には都心好立地の商業地もあった。その物件は、JR山手線「有楽町」駅徒歩約3分に立地する約37坪の土地と築55年、4階建ての古ビルで、延約165坪ある。テナントは飲食店など満室で、ほとんど最先の賃借権である。売却基準価額は2億3,310万円であったが、開札日の6日前に取下げになった。

 おそらくは、任意売却が間際に成立、決着がついたのだろう。占有者が引渡命令対象者であれば、競売で取得し、引渡命令申立てを背景に、明渡が円滑であったが、本件は先述のとおり最先の賃借権者であるので、引渡命令は発令されない。競売取得が明渡に有利に働かないことも、任意売却での決着を進めたようにも思う。

 しかし、2月9日の東京地裁本庁の対象物件は少なかった。ちなみに、この開札日の翌日、大阪地方裁判所本庁では対象物件は約70件あった。ここ数年、競売のマーケットは東京より大阪の方が大きい状況になっている。昨年では、東京地裁の本庁、支部合計の競落物件数が1,286物件であったが、大阪の本庁、支部の合計は1,422物件である。

 新築マンションの販売数も今年1月は大阪が東京を超えたとの報道もあった。不動産の流動性が関西の方が、現況では価格が上昇した東京より高いような気がしてくる。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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