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スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2024年01月23日

第420回 『いのちを見つける災害救助犬』の献身

 能登半島地震の現地では「災害救助犬」が大活躍しているようです。「災害救助犬」とは、「地震や土砂崩れ等の災害で、倒壊家屋や土砂等に埋もれ、助けを必要とする人」を、「主にその嗅覚によって迅速に発見するように訓練された犬」を意味しています。
 URL< https://x.gd/VQZIk>

[■■] 内閣府「防災情報のページ」の説明文

 内閣府「防災情報のページ」には、『いのちを見つける犬〜災害救助犬』と題して、次のような説明文が掲載されています。
 URL< https://www.bousai.go.jp/kohou/kouhoubousai/h29/88/news_06.html>

 ◆災害が発生したとき、土砂や倒壊家屋の瓦礫に埋没してしまった見えない被災者の“いのち”を探し出すために、災害現場に出動する犬たちを皆さんご存知でしょうか?その犬たちを「災害救助犬」と言います。

 ◆災害救助犬は“臭い”(被災者が発する呼気や体臭)によって被災者を捜索しその位置を特定し、“吠える事”によって位置を知らせます。現場の状況にもよりますが、人が進入出来ない災害現場を遠隔操作により数分程度で探知することができます。この「災害救助犬」は、「警察庁」や「自衛隊」、そして「日本レスキュー協会」などから派遣されることが多いそうです。

 ◆科学技術王国日本には、各種の捜索資機材(各種カメラ・ロボット・画像探知装置・音響探知装置など)があります。しかし、現場到着からの展開の早さという面もあり、「不特定多数の方々が被災した災害で、安否不明者数が特定出来ない場合」や、「広域な災害現場の場合」、「救助犬を捜索資機材の一つとして活用する事」は、機械的な捜索資機材のみの捜索に比べより効率的と考えます。

[■■]阪神大震災の時点では、「災害救助犬」は存在しなかった

 1995年1月17日に発生した阪神大震災の時点では、日本には「災害救助犬」は存在しなかったと思われます。

 私は当時、「建築専門誌」である「日経アーキテクチュアの記者」でした。そして、編集長から「現地に出かけて取材をしてくるように」という指示を受けました。東京駅で新幹線に乗車し、大阪駅まで辿り着いた後は、自転車を借りて被災地を歩き回りました。

 しかし、被災地で「災害救助犬」の姿を見かけることはありませんでした。当時は、まだ「災害救助犬」が存在していなかったのです。そして、阪神大震災以降、災害救助犬の育成が始まりました。

[■■] 「災害救助犬」には捜索能力と服従能力が必要

 救助犬には「捜索能力」と「服従能力」が必要となります。「捜索能力」には倒壊建築物の瓦礫や土砂流木の災害現場等高度の障害がある現場に入り、生存者の反応を探知する突破力と体力、臭気を上手く読み取る集中力が必要です。

 「服従能力」とは、ハンドラー(救助犬に帯同する指導手)の指示に基づいてリモコンの様に前進や左右に進入して捜索させ、緊急退避が発令された場合には速やかに呼び戻すといった様に犬が正確にハンドラーの指示に従うことです。犬とハンドラーのペアーはこの様な捜索、服従の実地作業を行い、災害救助犬の認定試験を受験します。しかしながら、各救助犬団体の審査内容にはバラツキが多く標準化されていないという事実もあります。

 また救助犬の運用面において日本の場合、ハンドラーが民間人になるので、責任の所在など、各災害救助機関や救助犬団体の救助犬の運用に対する考え方においても温度差があります。

 また、民間人が災害現場に進出する場合は車両の緊急走行や規制除外通行することが出来ず、東日本大震災や熊本地震では発災から2日〜3日後からの活動になり、迅速な捜索活動とはいえない実績があります。その結果、災害初動段階で災害救助犬という有効な一種の資機材を活用出来ていない状況にあります。

[■■]救助犬団体と各自治体との災害協定の締結が必要

 この様な状況の中で、救助犬団体が合同で『緊急救助犬援助隊』を編成し、各地の災害発生時に共同連携する事を目指した活動も本格化しています。救助犬団体と各自治体との災害協定の締結が進み、機運が高まっています。

 各自治体や現場の災害対応機関と検討を重ね、今ある問題を解決し、近い将来生起するであろう大規模災害に対して準備する事が「災害救助犬分野」の急務なのかもしれません。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャ─ナリスト。建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。

東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、 『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、 『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。


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