リアナビ

スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2012年10月30日

第83回「高さ情報」で見分ける一流と二流

 分譲マンションの住戸の質を判断するとき、筆者は平面図(プラン、間取り)だけではなく、断面図に描かれた「高さ情報」にも注目する。「高さ情報」のなかでも、特に重要なのは階高である。

  階高=天井裏(の高さ)+天井高+床下(の深さ)+スラブ厚

 階高が分かれば、天井裏、天井高、床下、スラブ厚に関しても、おおよその推測が可能になる。

 営業担当者が階高を把握していない場合には、以下の3点を質問してみる。

 (1) 2重床・2重天井ですか?──イエスなら、「床と天井の性能は十分」と判断できる。

 (2) 玄関扉の高さは何センチですか?──200cmなら「階高は不足」、205cmなら「階高はまぁまぁ」、210cm以上なら「階高は十分」と判断できる。

 (3) リビングの天井高は何センチですか?──240cmなら「住戸内の高さはギリギリ」、245cmなら「住戸内の高さは合格」で、250cmなら「住戸内の高さは十分」と判断できる。

 しかし、分譲マンションのモデルルームでもらう、住戸の間取りを描いた図面集には、これら「高さ情報」が描かれていない。よって、購入者は「高さ情報」を把握しないまま、契約に至るケースが少なくないと考えられる。

 最近、一部のデベロッパーが「天井高表」の欄を設けて、リビング、ダイニング、個室、キッチン、洗面室、トイレ、クローゼット、玄関、廊下の天井高を掲げるようになった。これは、一歩前進と評価していい。

 そして、筆者の経験則でいえば、「天井高表」を掲載しているデベロッパーは、一流デベロッパーだけに限られている。

 ただし、一流デベロッパーが「ハイグレード」として売り出す住戸でさえ、残念なことにリビング天井高が240cmどまりの物件が少なくない。本当は、このような物件は、「ハイグレード」と名乗るべきではないと思う。

 すなわち、やや複雑な結論になる。

 (1) 図面集に天井高表を掲載しているデベロッパーは一流である。

 (2) リビング天井高が240cmどまりの物件は、一流(ハイグレード)とはいえない。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。  東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。日本建築学会・編集委員会顧問。 ブログ『建築雑誌オールレビュー』を主宰。日経産業新聞『目利きが斬る・住宅欄』に寄稿。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『建築家という生き方』(共著、日経BP社)、 『ありえない家』(日本経済新聞社)、『建築産業再生のためのマネジメント講座』(共著、早稲田大学出版部) 、 『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)ほかがある。


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