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「斜め45度」の視点

2013年9月24日

第116回情報誌「SUUMO新築マンション」の大胆なサービス

 リクルートが毎週無料で配布している新築マンション情報誌「SUUMO新築マンション」を、"今なら"自宅へ送料ゼロで届けてもらえる。

 同誌は、新築マンションを買いたいユーザーのための無料住宅情報誌ではあるが、マンション業界関係者にとっても仕事のうえで欠かせない。これまでは、駅、コンビニエンスストア、スーパーマーケット、書店のラックなどに置かれている雑誌を入手するのが一般的だった。

 しかし、インターネット雑誌書店の「Fujisan」を経由すれば、自宅へ送料ゼロで配布してもらえる。

 (1)「Fujisan」(http://www.fujisan.co.jp/)で会員手続きをする。

 (2)「SUUMO新築マンション」の定期購読(購読料ゼロ)を申し込む。

 (3)購読期間は1ヵ月(4冊)、2ヵ月(8冊)、3ヵ月(12冊)の3種類。

 (4)送付先は、自宅や勤務先などを、自由に指定できる。

 (5)"今なら"送料ゼロ(無料)。

 同誌はそもそも無料誌なので購読料ゼロ。それに加えて、自宅や勤務先に送料ゼロで送付してもらえるのだから、こんなにありがたい話はない。

 ただし、「送料ゼロ」には、"今なら"という条件が付くのを見逃してはいけない。誰にでもすぐに分かることだが、そもそも、同誌は、ユーザーに読んでもらうための雑誌である。

 その意図に反して、多すぎる業界関係者が「Fujisan」の送料ゼロサービスを利用すれば、経費がかかりすぎて、サービス自体が停止されてしまう可能性がないわけではない。

 リクルートの「マンション情報誌」は、変わり身の速さを身上としてきた。

 まず、1976年に有料誌「月刊住宅情報」を創刊。あまたのライバル誌をアノ手コノ手でけちらして、独走体制を築き上げた。

 次に、「月刊住宅情報」を、週刊の有料誌「住宅情報STYLE」に模様替えして、情報の鮮度を確保した。

 しかし、インターネット時代の到来とともに、ユーザーの雑誌離れが進んで、発行部数が大きく落ち込んだ。

 このため、2005年に週刊の無料誌「住宅情報マンションズ」を創刊。販売収入を切り捨てることにより、読者数(部数)を確保しようとする捨て身の方針転換を実施した。

 次いで、2009年に同社のブランド「住宅情報」を「SUUMO」と改めたことに伴い、誌名を「SUUMO新築マンション」と変更した。現在は、「首都圏版」「横浜・川崎・湘南版」「東京市部・神奈川北西版」「埼玉県版」「千葉県・茨城県南版」「関西版」の6版がある。

 このような歴史を見る限り、「SUUMO新築マンション」をインターネット雑誌書店の「Fujisan」のシステムを経由して、送料ゼロで配布するという大胆なサービスをいつまで続けるのかは判断がつきにくい。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。  東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。日本建築学会・編集委員会顧問。 ブログ『建築雑誌オールレビュー』を主宰。日経産業新聞『目利きが斬る・住宅欄』に寄稿。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『建築家という生き方』(共著、日経BP社)、 『ありえない家』(日本経済新聞社)、『建築産業再生のためのマネジメント講座』(共著、早稲田大学出版部) 、 『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)ほかがある。


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