リアナビ

スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2015年3月31日

第170回「ザコノエ代官山」の坪単価が「ウェリス代官山」を56万円上回る

 アパグループは2010年4月に中期5ヵ年計画「SUMMIT5」を策定。

 「都心3区(千代田区・中央区・港区)におけるマンション年間供給棟数ナンバーワン」という、具体的な目標を掲げた。

 ただし、2014年には、都内の土地代の上昇や建築費の高騰を受けてマンションの事業環境が厳しくなってきたため、「都心3区で供給ナンバーワン」という方針を軌道修正。同社の最上位ブランド「ザ・コノエ」に注力して、坪単価や分譲価格で頂上を目指す路線に切り換えた。

 2015年2月末の時点では、「ザコノエ代官山(109戸)」「ザコノエ一番町(32戸)」「ザコノエ三田綱町(45戸)」の3プロジェクトが進行している。

 プロジェクトの第1弾となる「ザコノエ代官山」の1709平米(約517坪)の土地は、東急東横線代官山駅からわずか徒歩1分の好立地。しかも、アパホームの落札額は45億円に達した。そのため2013年9月20日に行われた起工式と記者発表の席では、マンションの平均坪単価が500万円の大台を超える可能性が話題になった。

 その「ザコノエ代官山」の第1期販売(35戸)が3月上旬に実施された。価格は約5000万(専有面積30.37平米)?約5億円(157.50平米)。注目の平均坪単価は630万円に達した。

 この坪単価は現在の相場と比較してどの程度高いのか。マーキュリー社の「リアナビ」を使って調べてみた。結果を次の図に示した。

 平均坪単価が最も高いのは、NTT都市開発が分譲した「ウェリス代官山猿楽町」の574.4万円である。このマンションは2013年5月の竣工を待って、6月から販売された。そして、「ザコノエ代官山」の起工式から約1カ月経った10月23日に、NTT都市開発が売れ行きについてニュースリリースを発表した。

 このようなプロセスを見ると、「ザコノエ代官山」の630万円という平均坪単価は、「ウェリス代官山猿楽町」を強く意識して決められたものかもしれない。

 なお、アパホームの沖田良一社長は、3番目のプロジェクトになる「ザコノエ三田綱町(45戸)」の坪単価が、1000万円を超える可能性があるとしている。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。  東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。日本建築学会・編集委員会顧問。 ブログ『建築雑誌オールレビュー』を主宰。日経産業新聞『目利きが斬る・住宅欄』に寄稿。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『建築家という生き方』(共著、日経BP社)、 『ありえない家』(日本経済新聞社)、『建築産業再生のためのマネジメント講座』(共著、早稲田大学出版部) 、 『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)ほかがある。


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