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スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2016年12月20日

第233回築地のマンションが恵まれていて、豊洲のマンションが恵まれていないもの

 前回は小池百合子新都知事の登場に伴って、東京都江東区豊洲に建つ分譲マンションに予想外の影響が及び、一時は「暴落危機説」が唱えられたことを説明した。

 

 築地市場は銀座に近くて便利だが、建物が老朽化している。一方の豊洲市場は銀座から遠くなるが、最新の設備を導入するので使いやすい・・・はずだった。しかし土壌汚染対策が不十分だったことが判明。築地から豊洲への移転は、早くても2017年冬から2018年春、遅ければ2018年冬から2019年春の見通しである。

 世間は今、「築地」および「豊洲」というキーワードに敏感になっている。そういうタイミングを見計らったかのように、「住まいサーフィン」を運営するスタイルアクトが11月下旬にユニークな調査結果を発表した。

 まず「平成29年(2017年)・認可保育園に入りやすい上位15駅」ランキングである。これは、東京23区の年齢別人口と、各区ごとの保育サービス推定利用割合を比較して、最寄り駅ごとに待機児童数を推定したもの。そのうち5位までを引用する。

 1位には築地市場駅、新板橋駅、新御茶ノ水駅の3駅が入った。いずれも待機児童数マイナス7人なので、希望者がみんな入園できる計算になる。

 ちなみに、築地市場駅欄の右端にある「マンションを探す」をクリックすると、「サンクタス銀座─2011年9月分譲」、「グランスイート銀座レスティモナーク─2004年2月分譲」、「クオリア銀座─2003年1月分譲」という3物件の概要を掲載してある。

 さらに、各物件ごとに、マンションから約1キロ圏内にある保育園・保育所の一覧が掲載されている。しかも、各保育園ごとに0歳~5歳までの年齢別定員、基本営業時間、延長保育時間も調べてある。情報が充実していることに感心した。

 次に「平成29年(2017年)・認可保育園に入りにくいワースト15駅」ランキングである(5位まで引用)。

 1位北綾瀬駅、2位勝どき駅、3位大島駅と続き、問題の有楽町線豊洲駅はワーストランキングの4位である。推計の待機児童数は165人なのでかなり厳しい。

 豊洲駅欄の右端にある「マンションを探す」をクリックすると、「クレヴィア豊洲─2016年1月分譲」「パークホームズ豊洲ザレジデンス─2015年4月分譲」など37物件の概要と、各物件ごとにマンションから約1キロ圏内にある保育園・保育所の一覧が掲載されていた。

 豊洲には大規模なマンションが多いのに、保育園・保育所の定員は数十名から百名超に過ぎない。待機児童数が165人というのもうなずける気がした。

 小池都知事は今年9月に「保育サービスを利用できる児童数を、年度当初の1万2000人から5000人増やし、1万7000人にする緊急対策」を発表した。桝添要一前都知事と比較すると、大きな前進と評価されている。しかし認可保育所をつくるのには1年半、小規模認可保育所でも7カ月~9カ月かかるので、平成29年(2017年)4月1日には、間に合わない可能性が強い。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。  東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。日本建築学会・編集委員会顧問。 ブログ『建築雑誌オールレビュー』を主宰。日経産業新聞『目利きが斬る・住宅欄』に寄稿。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『建築家という生き方』(共著、日経BP社)、 『ありえない家』(日本経済新聞社)、『建築産業再生のためのマネジメント講座』(共著、早稲田大学出版部) 、 『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)ほかがある。


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