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スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2014年12月9日

第160回SUUMO研究(中)年収400万円で買える4LDKはどこに?

 ことわざに、「念には念を入れよ」とある。リクルートのような大会社にあえてもの申すからには、さらに慎重を期さなければならない。今回は、「年収400万円の僕に買える4LDKはどこに?」、をテーマにする。

 「年収400万円の僕」の場合には、年収倍率の観点からは4000万円未満の物件がふさわしい。「東京都の平均年収倍率9.79×400万円=3916万円」という計算である。

 そこで「SUUMO」を使って、「東京都、新築マンション、4000万円未満、4LDK、80平米以上」という条件で検索してみた。検索結果の画面を以下に示す。

 意外なことに35件もの物件が表示されている。一瞬、「えっ、こんなにあるの」と驚いたが、検索結果の画面をよくよく見ると、どうも様子がおかしい。

 1件目「新小岩パークフロント──JR総武線新小岩駅徒歩17分、価格3460万円~5190万円」とある。しかし、下欄の注記を見ると、「3LDK3400万円台~、85平米台4LDK4600万円台~」。すなわち、4LDKは4600万円台なので、検索条件に違反していたのである。判定は「ゴールではない」。

 2件目「レジデントプレイス西葛西──4LDKは6298万円」。判定は「ゴールではない」。

 3件目「ザ・パークハウス北赤羽」。ザ・パークハウスといえば、三菱地所レジデンスの高級ブランド。詳細を見るまでもなく、明らかに検索条件違反。判定は「ゴールではない」。(気になる人は自分でどうぞ)。

 4件目「KACHIDOKI THE TOWER──勝どき駅徒歩6分、銀座1.7km圏」。都心に近いこのような話題物件の4LDK住戸が、4000万円未満である訳がない。判定は「ゴールではない」。(これも気になる人は自分でどうぞ)。

 すなわち、消費者が4000万円未満の4LDKを探そうと思っても、「SUUMO」の条件検索機能はそれに適切に対応していない。そして、「3LDK3400万円台~4LDK4600万円台」など、条件の一部しか満たさない物件を幅広く拾って表示している。

 これは、物件を販売するマンション会社には便利かもしれないが、購入しようとする消費者には不便である。これ以上、時間をかけたくないので、「SUUMO」検索結果のチェックはこれで打ち切りとする。

 (下に続く)

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。  東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。日本建築学会・編集委員会顧問。 ブログ『建築雑誌オールレビュー』を主宰。日経産業新聞『目利きが斬る・住宅欄』に寄稿。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『建築家という生き方』(共著、日経BP社)、 『ありえない家』(日本経済新聞社)、『建築産業再生のためのマネジメント講座』(共著、早稲田大学出版部) 、 『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)ほかがある。


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