リアナビ

スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2021年5月25日

第376回 「公的・空き家バンク」でアットホームとライフルが先行スーモは掲載できず

 「不動産ポータルサイト」として知名度が高いのは、「リクルート住まいカンパニー」が運営する『SUUMO』、アットホーム社が運営する『at home』、LIFULL社が運営する『LIFULL HOME'S』の3つです。

 この3大ポータルサイトに掲載されている、『コンテンツ(情報の内容)』はほぼ同じなのですが、新型コロナ問題の発生以降、かなり差がついたものがあります。それは、「公的な空き家バンク」が掲載されているか否か、という点です。

 『at home』──「公的な空き家バンク」が掲載されている。

 『LIFULL HOME'S』──「公的な空き家バンク」が掲載されている。

 『SUUMO』──「公的な空き家バンク」は掲載されていない。
       ──その代わりに、「私的な空き家バンク」が掲載されている。

 「3大ポータルサイト」に、なぜ、このような差がついてしまったのでしょうか?

 その疑問に答える前に、まず「公的な空き家バンク」の現状を、把握しておきましょう。

 【■■】『at home』の「公的な空き家バンク」

 『at home』の「空き家・空き地バンク」には、以下に示すコンテンツが掲載されています。
  URL<https://www.akiya-athome.jp>


  ◆①全国版「空き家・空き地バンク」
   掲載物件数─5489件(買う4499件、借りる990件、2021年3月31日時点)
   参画自治体数─536件

   「全国版空き家・空き地バンク」へ参画している自治体の一覧です(括弧内は掲載物件数)。

   北海道(21)、青森県(12)、岩手県(14)、宮城県(1)、秋田県(14)、山形県(9)、
   福島県(22)、茨城県(17)、栃木県(20)、群馬県(8)、埼玉県(28)、千葉県(22)、
   東京都(2)、神奈川県(14)、新潟県(15)、新潟県(15)、石川県(4)、福井県(10)、
   山梨県(9)、長野県(9)、岐阜県(19)、静岡県(7)、愛知県(8)、三重県(10)、
   滋賀県(10)、京都府(10)、大阪府(10)、兵庫県(27)、奈良県(19)、和歌山県(10)、
   鳥取県(3)、島根県(3)、岡山県(8)、広島県(7)、山口県(7)、徳島県(8)、
   香川県(3)、愛媛県(7)、高知県(2)、福岡県(17)、佐賀県(14)、長崎県(11)、
   熊本県(11)、大分県(13)、宮崎県(11)、鹿児島県(14)、沖縄県(2)

   このうち、各自治体のリンクをクリックすると、自治体の専用ページへ「ジャンプ」する仕組みです。

  ◆②特集から探す(『at home』)

   上記の「各自治体一覧」からではなく、「各特集」ごとにアクセスする方法もあります。   

   ◇農地付き物件特集
   ◇古民家で暮らす!
   ◇おためし移住体験
   ◇温泉が好きだ!

   ◇テレワークな暮らし
   ◇全国の店舗付き物件特集
   ◇田舎暮らしがしたい!
   ◇眺望良好物件特集

   ◇リフォーム物件特集
   ◇動画で地域の魅力を発見!
   ◇地域の伝統文化の継承
   ◇地域おこし強力隊

  ◆③「エリアPick UP!」の詳細
   例えば、「山形県西川町」は、次のように紹介されています──。

   西川町は山形県のほぼ中央に位置し東北の名峰月山の麓に広がる町です。

   町内には清流日本一と名高い寒河江川が流れるなど豊かな大自然に囲まれており、
   東北の里山ならではの四季の移ろいを感じることができます。

   また、東北屈指の「山菜・きのこ」の宝庫。
   春から初夏で四十六種、秋の茸・木の実で三十二種と群を抜きます。

   深い雪の中で育まれた山菜は、水分をたっぷり含んで瑞々しい。
   雪解けと共に一斉に芽吹き春を告げる山菜は山からの滋味豊かな贈り物です。

  ◆私(細野透の見解)

  『at home』の「空き家・空き地バンク」はかなり充実しています。全国の各自治体の協力を得たゆえに、これだけのコンテンツを確保できたと思われます。

 【■■】『LIFULL HOME'S』の「公的な空き家バンク」

 次に、『LIFULL HOME'S』の「空き家バンク」をチェックしてみましょう。
  URL<https://www.homes.co.jp/akiyabank/>


 コンテンツの冒頭に、「こちらに掲載している物件情報は、自治体が管理しています」という説明文が添えてありました。そのデザインは、これまで見慣れた『HOME'S』ではなく、別の『HOME'S』にアクセスしたような感じです。

 説明文のすぐ下には、「新講座スタート」のお知らせもあります。「空き家の課題解決・活用ノウハウを学ぶ──空き家の相談員・育成カレッジ」。ずいぶん力が入っていますね。

 この「空き家バンク」には、全国各地の635自治体が参加しています。

 ◆「空き家を探す」3つのコース

 ここには、「地域から探す」「地図から探す」「フリーワードを入力」という、「3つのコース」が用意してあります。

 私は、「フリーワードを入力」するコースに、コロナ禍の不動産関係者にとって関心の的と思われる、「テレワーク」というキーワードを打ち込んでみました(2021年3月30日)。そうすると、ヒットしたのは「4物件」だけでした。少し寂しい結果ですね。

 これだと、何だか気の毒なので、次に「眺望」と打ち込みました。ヒットしたのは「38物件」に増えました。念のために「賃貸」と打ち込むと365件、「売買」と打ち込むと249件がヒットしました。

 合計でも614件に過ぎません。何だかオカシイですね。

 この段階で「はたと気づいて」、「物件」と打ち込みました。すると「2411件」がヒットしました。不動産の世界で、取り扱い件数を示す基本的な単位は「物件」、でしたね。

 【■■】「3大ポータルサイト」に差が付いた理由

 記事の冒頭で次のように説明しました。

 『at home』──「公的な空き家バンク」が掲載されている。
 URL<https://www.akiya-athome.jp>

 『LIFULL HOME'S』──「公的な空き家バンク」が掲載されている。
 URL<https://www.homes.co.jp/akiyabank/>

 『SUUMO』──「公的な空き家バンク」は掲載されていない。
       ──「私的な空き家バンク」が掲載されている。
 URL<https://suumo.jp/b/kodate/kw/空き家バンク/>

 なぜ、このような差がついてしまったのでしょうか。それは、『at home』と『LIFULL HOME'S』が、国土交通省の「全国版 空き家・空き地バンク」のモデル事業に採択されたのに、『SUUMO』は採択されなかったからです。

 【■■】国交省の2017年付け「報道発表資料」を要約

 国土交通省は2017年10月31日に、「全国の空き家・空き地情報がワンストップで検索可能となります、『全国版空き家・空き地バンク』の試行運用開始について」、と題する報道発表を行いました。

 URL<https://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo16_hh_000158.html>

 ◆現状・課題
 平成29年に国土交通省が実施した地方自治体の空き家対策等に関する調査では、全自治体の約4割(763自治体)が既に空き家バンクを設置しており、約2割(276自治体)の自治体が空き家バンクを準備中又は今後設置予定となっております。

 このように、地方自治体における空き家バンクの取組は進んできましたが、現状では、自治体ごとに各々設置され、開示情報の項目が異なり解りづらいなど、課題も指摘されているところです。

 このため、国土交通省では、今年度より、開示情報の標準化を図りつつ、各自治体の空き家等の情報を集約して、全国どこからでも簡単にアクセス・検索できるようにする、「全国版空き家・空き地バンク」の構築に取り組んできたところ、今般、その試行運用を開始しましたのでお知らせ致します。

 ◆「全国版空き家・空き地バンク」の試行運用
 公募によって選定した2事業者(株式会社LIFULL、アットホーム株式会社)により、今般「全国版空き家・空き地バンク」の試行運用を開始しました。今年度は国のモデル事業として実施され、試行運用の状況等を踏まえ必要な改善を図ったうえで本格運用となります。

 現時点で約200自治体に参加をいただいており、準備ができた自治体から順次、掲載を進めて参ります。

 今回は、先行する自治体からなる全国版空き家・空き地バンク創設で、利便性の向上等を速やかに図るとともに、現在準備中又はまだ未参加の自治体にイメージを掴んでいただき、参加を広げていくため、試行版として運用を開始したところです。

 今後、全国の自治体に働きかけを行い、年度末までに約1000自治体の参加を目標に、日々、掲載物件数の増加・検索機能等の向上・サイト情報の充実を図っていきます。

 「移住したい!田舎暮らしがしたい!」など、消費者のニーズが多様化する中、本バンクを通じた空き家等のマッチング促進を図り、地域活性化の実現に寄与してまいります。

 ◆各事業者によるサービスの詳細は、下記リンク先をご参照下さい。
  株式会社LIFULL
   URL<https://www.homes.co.jp/akiyabank/>
  アットホーム株式会社
   URL<https://www.akiya-athome.jp/>

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャ─ナリスト。建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。

東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、 『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、 『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。


BackNumber

コラム一覧

細野透 「斜め45度」の視点

2024年03月05日


山田純男 東京競売ウォッチ

2024年04月23日



Copyright (c) 2009 MERCURY Inc.All rights reserved.