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「斜め45度」の視点

2020年12月22日

第366回 大京アステージがマンション居住者向け「健康管理アプリ」を試験導入

 大京グループのマンション管理会社である「大京アステージ」は、「次世代型マンション管理サービス」を開発・推進している最中です。

 その大京アステージは、地域薬局と提携したマンション居住者向け健康支援サービス「AI搭載型健康管理アプリ」を、2020年10月30日から2021年3月まで試験的に導入しています。

 同社は、「AI搭載型健康管理アプリ」の機能性、および「マンション居住者のニーズ」を検証したうえで、2021年度中に「本格導入を目指す」方針です。

 これは「新型コロナ問題」に触発された取り組みです。


「次世代型マンション管理サービス」のイメージ図

【■■】「AI搭載型健康管理アプリ」の詳細

 上記の「AI搭載型健康管理アプリ」は、世界5カ国(台湾、アメリカ、日本、香港、シンガポール)で約52万人が利用しているとされる、「H2 Inc」社の健康生活サポートアプリ、「シンクヘルス」をベースにしています。

 この「シンクヘルス」では、利用者にまず、「活動量計」や「上腕血圧計」などのデジタル機器を提供。各利用者に「血糖値・血圧・体重」や、「食事・運動・薬」などの基本的なデータを、きちんと記録してもらいます。

 次に、そのデータを「AI(人工知能)」で分析することにより、「生活習慣の自己管理」に役立てることを目的にしています。

 その特徴は、利用者に向けて定期的にメッセージを配信。「多くのユーザーから蓄積したデータに基づいて、各人に翌月の目標数値をアドバイスする」ため、利用者がモチベーションを継続しやすい仕組みになっていることです。

 それゆえに、日本国内では「H2 Inc」社の日本法人である「H2」株式会社を通じて、約12万人が利用しているそうです。

【■■】約1100世帯のマンションに試験導入

 今回の「試験導入」の対象は、大京アステージが管理している、「神奈川県川崎市宮前区に建つマンションの管理組合(約1100世帯)」です。

 ◆検証・確認・構築する3項目

  ①「健康支援サービスに対する需要」を検証し、かつ改善する。 ②「アプリの操作性」を確認し、かつ「新たなコンテンツ」を開発する。 ③「地域薬局とのネットワーク」を構築し、かつ運用の方法を検証する。

 また「試験導入段階」の独自サービスとして、「地域薬局の薬剤師による健康やダイエットに関する相談サービス」を、「アプリのチャット機能」を活用して無料で提供する予定です。

 ◆今後の展開

 経済産業省は現在、「地域におけるヘルスケア産業の創出」と「健康・医療情報の活用」を推進しています。それに加えて、最近は新型コロナコロナ問題の発生によって、健康管理に関心が高まっています。

 大京アステージはそういった事情を考慮。まず「AI搭載型健康管理アプリ」を、試験導入(2020年10月〜2021年3月)。その成果を見極めた後に、2021年度中の本格導入を目指す方針です。

 「大京アステージのニュースリリース」
  URL<https://www.daikyo.co.jp/news/20201030/post-1.php>

【■■】管理業務をDXで変革する「MiDD Project(ミッド・プロジェクト)」

 「大京アステージ」は2020年6月11日には、「デジタルトランスフォーメーション(DX)による"次世代型マンション管理サービス"の開発に着手」と題するニュースリリースを公表しています。

 そのリリースで「2020年秋以降に予定している取り組み内容」として、次の5項目を掲げています。

 ①デジタル技術で居住者の健康を支援するヘルスケアサービスの提供
 近隣の薬局などと提携し、薬剤師など健康管理者と居住者をデジタル技術でつなぎ、健康に関するアドバイス、オンライン健康指導、薬の宅配、処方の管理など、居住者の健康を支援します。

「AI搭載型健康管理アプリ」の使用イメージ

 ②電子契約システムの導入 
 「管理委託契約書」など、管理組合と管理会社との間で締結する書面の電子契約システムを導入することで、契約書保管の負担や印紙代を削減できます。

 ③居住者と管理会社をつなぐアプリの開発
 「UXデザイン(ユーザーに優れた体験を提供することを目的としたデザイン方法論)」を用いて、居住者からの日常生活におけるご相談やトラブル発生時の緊急連絡、各種申請手続きなどをアプリで簡単にできる環境を整備します。さらに、設備メンテナンスや交換などのマンション固有の各種情報を定期的に配信します。

 ④AI活用による社内データベースの整備
 お客さまからの問い合わせに、迅速に的確にお応えするために、これまでの知見やノウハウを蓄積した「社内のデータベース」から、AIを活用して必要な情報に速やかに取り出せる環境を整備します。

 ⑤AI活用による社内業務の自動化・効率化を推進
 AIを活用し、「管理組合の総会資料や議事録を自動作成」することで、社員の事務業務効率化を進めます。一方で、将来起こる建て替えや空室問題、「3つの老い」の解決に人的リソースを投入し、より一層安心して生涯にわたり住み続けられるマンション環境をご提供します。

この5項目(①〜⑤)に象徴されるように、大京アステージはマンション管理における「デジタルトランスフォーメーション(DX)」、すなわちIT技術の浸透に熱心に取り組んでいます。

「大京アステージのニュースリリース」
  URL<https://www.daikyo.co.jp/news/dev/files/20200611.pdf>

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャ─ナリスト。建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。

東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、 『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、 『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。


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