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スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2013年11月19日

第122回首都圏ランキングと近畿圏ランキングの「顔触れ」

 私は「日経産業新聞」の「目利きが斬る」欄に、月に1回のペースで、話題のマンションを評価する記事を寄稿している。従来は首都圏が中心だったが、今年の秋から近畿圏と名古屋圏のマンションも取材の対象に加えることになった。

 不動産経済研究所の「全国マンション市場動向」によると、東京圏の2012年事業主ランキングは以下である。

 1位 野村不動産─4437戸

 2位 三井不動産レジデンシャル─4128戸

 3位 三菱地所レジデンス─4206戸

 4位 住友不動産─3091戸

 5位 大京─1858戸

 大手デベロッパーを中心に「毎度お馴染み」の見慣れた会社が並んでいる。一方、近畿圏の2012年事業主ランキングには、まったく異なる会社が登場してくる。

 1位 プレサンスコーポレーション─1486戸

 2位 近鉄不動産─1357戸

 3位 阪急不動産─1176戸

 4位 日本エスリード─1096戸

 5位 東急不動産─1047戸

 このうち、プレサンスコーポレーションと日本エスリードは投資用ワンルームマンションが中心。普通の分譲マンションに限ると、近鉄不動産、阪急不動産、東急不動産となる。近鉄不動産、阪急不動産には納得できるが、東急不動産が5位に食い込んだ理由はよく分からない。

 いずれにしても、事業主ランキングを参考にして、近畿圏を代表するのは近鉄不動産と判断。同社が9月中旬に第1期販売を開始した、「ローレルスクエアあやめ池」を取材してきた。

 敷地は近鉄奈良線「菖蒲池駅」に近い「近鉄あやめ池住宅地」。旧「あやめ池遊園地」の跡地を整備した住宅地で、集合住宅、戸建住宅、商業施設、近畿大学付属小学校・幼稚園、地域医療を担うメディカルコート、高齢者施設などがゆったりと並ぶモダンな街である。

 「ローレルスクエアあやめ池」(奈良市あやめ池北2丁目)は整備計画のフィナーレを飾る分譲マンションになる。総戸数141戸、専有面積約71~106平方メートル、平均坪単価154万円の物件である。

 大阪難波駅から近鉄奈良駅まで約33キロの区間は、近鉄難波線、大阪線、奈良線の3路線で結ばれている。菖蒲池駅から大阪難波駅まで26分、近鉄奈良駅まで9分の距離だ。その関係で、「ローレルスクエアあやめ池」の想定購入者は近鉄沿線に住む人たちになる。

 競合物件を聞くと、「ローレルスクエア学研奈良登美ヶ丘Ⅳ」(奈良市中登美ヶ丘6丁目)、「ローレルコート西大寺国見町」(奈良市西大寺国見町2丁目)、「ローレルスクエア学園前」(奈良市鶴舞西町)と、近鉄不動産のマンションばかり。

 その理由は、奈良市で供給されるマンションの7~8割が、近鉄不動産の物件だからという。すべてが自社内競合とは、何か悩ましい感じである。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。  東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。日本建築学会・編集委員会顧問。 ブログ『建築雑誌オールレビュー』を主宰。日経産業新聞『目利きが斬る・住宅欄』に寄稿。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『建築家という生き方』(共著、日経BP社)、 『ありえない家』(日本経済新聞社)、『建築産業再生のためのマネジメント講座』(共著、早稲田大学出版部) 、 『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)ほかがある。


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