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スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2023年11月28日

第418回 『日経アーキテクチュア・タワマン記事』が訴えたこと

 私はかつて、建築専門誌『日経アーキテクチュア』の記者(最終的には編集長)でした。

 すぐ下に掲載した、『日経アーキテクチュア 2023年1月26日号』の表紙を見てください。タワーマンションは「激変する都市のランドマーク」として扱われています。

[■■]『日経アーキテクチュア』と「タワーマンション」

 『日経アーキテクチュア』は「タワーマンション」について、どのような記事を掲載してきたのでしょうか?。それを確認するため、2023年10月下旬、「Google」の検索欄に、「日経アーキテクチュア」「タワーマンション」という2種類のキーワードを打ち込んでみました。

 検索欄は、「すべて」「画像」「ニュース」「地図」「動画」「もっと見る」という、「6種類のコーナー」に分かれています。「各コーナーの情報量」は、以下に示す通りです。

「1 すべて」約3万1200件
「2 画像」約185件
「3 ニュース」約42件
「4 地図」2件(ザ・タワー横浜北仲)( ザ・なんばタワーレジデンス)
「5 動画」約69件
「6 もっと見る」(ショッピング、書籍、フライト、ファイナンス)

今回は、 このうち「3 ニュース」に掲載された、「42件の情報に」注目することにしましょう(注・掲載件数は、検索日によって変化します。以下の情報は、2023年10月27日に収集しました)。

[■■]「3 ニュース」に掲載された情報 (注・星印★はネガティブな情報を意味)

◆NO1〜10

 1【★傾いた58階建てマンション、7年の苦闘(サンフランシスコの「現代版ピサの斜塔」)】

 2【麻布台ヒルズの330mタワー最上部にアマン住宅、別棟に世界初の姉妹ホテル「ジャヌ」】

 3【地震の揺れを最大半減する制振システム、鹿島が大阪の39階建てタワマンに初導入】

 4【大阪・堂島に分譲マンションとホテル合体タワーがもう1棟、三井不グループが27年開業】

 5【★米ニューヨークで超高層マンション建設中にクレーン倒壊、アームが隣接ビルに衝突】

 6【超高層ビルの上部躯体がTMDの重りに】

 7【換気しながら高断熱を保てる超高層マンション対応の防火窓】

 8【★札幌で施工中の超高層ビルで大成建設が精度不良を隠蔽、再構築で竣工が2年超遅延】

 9【1位は「Q.大阪の高級タワマンが別の施設と一体化して販売好調、何と合体した?」】

 10【世界で最も細長い超高層マンション】
  (注)NO1〜10に関する詳しいデータは、以下に示すURLで確認可能です。   URL< https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/na/18/00204/031700001/>

◆NO11〜20

 【★福岡市の免震偽装超高層マンション、築15年なのに解体決定の怪】

 【★清水建設が施工する田町タワー、床の不具合は三菱地所設計の指摘で発覚】

 【大阪の高級タワマンが別の施設と一体化して販売好調、何と合体した?】

 【★長期修繕の次は利用限界、分譲マンションの2つの老いから「終活」を想定してみる】

 【★1位は「福岡市の免震偽装超高層マンション、築15年なのに解体決定の怪」】

 【★ずさんな品質管理が生んだ大成建設の施工不良、柱の傾きは最大2.1cmの基準超過】

 【★養生不足が疑われる韓国の高層マンション崩落、日本の専門家はこう見る】

 【旧百貨店を1万5000m2も再利用してCO2削減、野村不の超高層マンション】

 【日本最大級の木造マンション完成、見学会で明かされた「脱アパート」への挑戦】

 【中銀カプセルタワー、再燃する保存解体論議】

◆NO21〜30

 【フォーシーズンズと一体のタワマン、「ブリリアタワー堂島」は希少性で販売好調】

 【★韓国で建設中の高層住宅崩落】

 【「建設反対」の横断幕は名誉毀損か】

 【既存RC超高層マンションを制震改修】

 【過大商業施設を身の丈に減築】

 【★南海トラフの長周期地震動対策、タワマン改修の補助申請ゼロ】

 【湾岸「最前列」に立つハルミフラッグ50階タワー2棟「SKY DUO」、23年6月販売開始】

 【福岡の大型商業施設を大胆に減築、空いたスペースに何をつくった?】

 【スターツの高層ハイブリッド木造免震ビル、RC造と同等価格で「最強の提案」

 【高級タワマンとフォーシーズンズホテルが合体、東京建物などが大阪・堂島で超高層開発】

◆NO31〜40

 【大林組の節付き杭が500m超のビルに対応、支持力は国内最大級の170MN】

 【高層マンションを長周期地震動から守る、吹き抜けにダンパー設置し揺れを低減】

 【★「ルフィ」広域強盗に社会が震撼、侵入犯罪がこれから増えるワケ】

 【500m超のビルに対応する節付き杭】

 【★建設中の超高層マンションの柱・梁にひび、再施工 - 鹿島田】

 【大成建設とカネカ、バルコニーのガラス手すりと一体化した太陽光発電システムを開発】

 【黒川氏設計の中銀カプセルタワービル、管理組合が建て替えを決議】

 【★漏水トラブル、超高層マンションと地下居室で問題噴出】

 【★市街地でタワークレーンをへし折る、台風14号被害】

 【★火災で騒然「虎ノ門ヒルズレジデンシャルタワー」建設現場、地下1階2000m2焼損】

◆NO41〜42

 【★白金「億ション」で大成が施工ミス、手直し中】

 【★庁舎の真上に分譲住宅、借金ゼロで地域再生促す】

[■■]私の結論

 私は「タワーマンションのネガティブな面」に焦点を当てた記事には、★印をつけました。★の数は全42件のうち18件(約43%)でした。それは、何を意味しているのでしょうか。私は「次の2点ではないか?」と感じています。

 「①マンション業界や建築業界は今後、タワーマンションをより慎重に、設計・施工しなければならない」。

 「②竣工後には、タワマンの住民がきちんとメンテナンスできるように、業界はそれなりのサポートをする必要がある」。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャ─ナリスト。建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。

東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、 『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、 『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。


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