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「斜め45度」の視点

2021年11月30日

第388回 【特別コラム】国土交通省も痛感する「宅配ボックスの必要性」

 不動産ポータルサイトの「at home」を運営するアットホーム株式会社は、2021年8月、「不動産のプロが選ぶ、2021年上半期に問合せが多かった、条件・設備ランキング」を発表しました。

 Q(質問)----「賃貸居住用物件を探しているお客さまから、問合せが多かった・人気のあった設備等を教え てください」。

 A(回答)
  1位 インターネット接続料無料 43.2%
  2位 オートロック 34.2%
  3位 モニタ付きインターホン 31.2%
  4位 追い焚き機能 25.0%
  5位 宅配ボックス 24.9%

  6位 温水洗浄便座 23.5%
  7位 独立洗面台 23.0%
  8位 コンロ2口以上 11.8%
  9位 浴室暖房乾燥機 11.2%
  10位 システムキッチン 11.0%

  このうち、5位「宅配ボックス 24.9%」に注目してください。アットホームは、「オンラインでの買い物が多いため、宅配ボックスがあると助かるというお客さまがいらっしゃいました」と説明しています。

【■■】宅配ボックスのメリット

 宅配ボックスとは、マンションやアパートなどに設置されていて、不在時でも荷物を受け取ることができる装置です。

 そのメリットは、「仕事が忙しく、配達時間内に荷物を受け取ることが難しい」という生活リズムの人でも、宅配ボックスがあれば、いつでも荷物を受け取れることです。

 また、再配達を依頼する必要がないので、手続きの手間もかからず、指定時刻まで自宅で待機する必要もなくなります。

 さらに、到着が翌日以降にならず、最短で荷物を確保できるので、少しでも早く受け取りたいという場合には、特に便利に感じられるはずです。

【■■】宅配ボックスと「新型コロナ問題」「トラックドライバーの人手不足」

 「宅配ボックスの必要性」に関しては、新型コロナ問題、あるいはトラックドライバーの人手不足などの面から、国土交通省も痛感していたようです。

 国土交通省総合政策局物流政策課は2020年12月11日、「宅配便の再配達率は約11.4%~2020年10月の調査結果を公表」と題する報道発表資料を公開しました。

 「令和2年10月の宅配便再配達率は約11.4%でした。国土交通省では、トラックドライバーの人手不足が深刻化する中、再配達の削減を図るため、宅配ボックスや置き配をはじめ多様な方法による受取を推進しています。

 今回の調査結果は前年同月(約15.0%)と比べて約3.6%ポイント減となりましたが、これは新型コロナウイルスの感染拡大を契機としてテレワークなど「新しい生活様式」が普及したことによる在宅時間の増加や、宅配ボックスや置き配の活用など多様な受取方法が広まりつつあること等が影響したものと考えられます。

 なお、今回の調査結果は本年4月(約8.5%)と比べて約2.9%増となりましたが、外出自粛要請等の影響があった4月と比べて在宅時間が減少したこと等が影響したと考えられます」。

 「近年、多様化するライフスタイルとともに電子商取引(EC)が急速に拡大し、宅配便の取り扱い個数 が増加している一方、宅配便の再配達は CO2 排出量の増加やドライバー不足を深刻化させるなど、重大な社会問題の一つとなっています。

 今後も本調査を通して再配達の発生状況を継続的に把握し、関係する皆様とともに再配達削減に取り組んでまいります」。

【■■】国交省の「宅配ボックス支援策」

 国土交通省は2021年7月1日、「宅配ボックス設置に関する支援策等一覧」を公表しました。これは、「公営住宅、改良住宅、UR住宅 、UR賃貸住宅、民間賃貸住宅、戸建住宅、共同住宅(分譲マンション等)における宅配ボックス設置」を支援しようという対策です。

 それに加えて、「宅配事業者が宅配デポ(小型の物流拠点)に宅配ボックスを増設する」とき、地方公共団体が奨励金を支給する」ことも可能にしています。

【■■】2021年度グッドデザイン賞」を受賞した大京の「専用宅配ボックス」

 そのような動きの中で、マンションデベロッパーの大京が、分譲マンションの各住戸専用宅配ボックス「ライオンズスマートボックス」を開発して、「2021年度グッドデザイン賞」を受賞しました。

 大京はプレスリリースで次のように説明しています。

 「ライオンズスマートボックス」は、分譲マンションの各住戸玄関に設置する居住者専用の宅配ボックスです。居 住者は従来型の宅配ボックスのように、マンションのエントランスまで足を運ぶ必要がなくなり、「置き配」での 盗難や雨濡れなどの問題を解決できます。ボックス内には3つの収納スペースを設け、クリーニング品や食品など 種類の異なる複数の荷物にも対応できます。昨今の宅配便の増加に伴う再配達などの課題に対応するともに、居住 者の利便性を高める取り組みが評価されました」。

 「ライオンズスマートボックス」の概要は以下の通りです。

 本製品は当社と株式会社フルタイムシステムが共同開発し、フルタイムシステムによる事前審査を経た配達業者が 、入館・宅配ボックス操作用のICカードを使用することで、各住戸専用宅配ボックスに安全に荷物を届ける仕組み を構築しました。ボックスは玄関横に設置し、施錠式の3つの収納スペースを設け、非対面で複数の配達物を受け 取れます。さらに、万一の災害に備え、防災備蓄品の収納スペースをボックスの最上段に設置。近年注目されてい る、在宅避難にも役立てることができます。

【■■】グッドデザイン賞の審査委員による「評価コメント 」

 コロナ禍以降、配達サービスの業種が多様化する中、さまざまな物を効率的に配達しストレスなく受け取るためのシステムの改善が求められている。

 このマンション用宅配ボックスは各戸に設置されることを想定し、段ボール箱 の宅配物だけでなく、クリーニング店の利用や食料品購入といった、今日的なサービスを複数利用する際にも安心 安全を提供するものとなっていることを評価する。

 今後も、非対面を基本とした宅配サービスのさまざまな業種への拡大が予想されるが、それぞれのサービスの特殊性を受けとめつつ汎用性を確保するアイデアの深化をさらに期待したい。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャ─ナリスト。建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。

東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、 『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、 『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。


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