リアナビ

スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2012年12月18日

第88回「マンションは管理を買え」といわれる理由

 昔から「マンションは管理を買え」といわれる。これは、「居住者と管理組合が規約をきちんと守り、かつ管理会社の良き協力を得てマンションを適切に維持していけば、資産価値が保たれやすい。よって、管理を重視しなければならない」ことを意味する。

 しかし、よくよく考えると、これは不思議な言葉である。新築マンションを購入する段階では、どんな居住者になるかよく分からないし、管理組合がうまく運営されるか否か判断するのは難しい。

 すなわち、「マンションは管理を買え」とは、新築マンションではなく、中古マンションを購入しようとする段階で通用されることわざになる。

 理想的な中古マンションの代表が、いわゆるヴィンテージマンションになる。このヴィンテージマンションは、2段階を経て生み出されていく。第1段階は、新築時点で「都心の高級住宅地に、一流デベロッパーがハイグレードなマンションとして誕生させ、住まいとしての価値が高い」こと。第2段階は、年月を経ても「維持と管理の状態がよく、居住性と資産価値が保たれている」こと。

 要するに、優れた物件に、賢明な居住者が入居し、かつ管理組合が努力して、はじめてヴィンテージマンションになり得るのである。

 さて、新築マンションを購入しようとする段階で、「管理を買えるマンション」か否かを、どのようにして判断すればいいのだろうか。物差しになり得るのは、立地の将来性、デベロッパーおよび管理会社に対する評価などになる。

 誰でも入手できる評価表は、アトラクターズ・ラボの調査結果である。

 まず、立地の評価を示す「2011年版売主別中古マンション騰落率ランキング─単独売主+JV幹事会社売主の合計)では、1位は丸紅、2位は伊藤忠都市開発、3位は三井不動産レジデンシャル、4位は新日鉄都市開発、5位は東急不動産だった。

 また、「2011年版売主別住み心地満足度」では、1位は野村不動産、2位は三井不動産レジデンシャル、3位は住友不動産、4位は三菱地所レジデンス、5位は丸紅だった。

 さらに、「2012年版管理会社についての評価ランキング」では、1位は野村リビングサポート、2位は大和ライフネクスト、3位は住友不動産建物サービス、4位は三井不動産住宅サービス、5位は大京アステージだった。

 これらを足し合わせると、ひとつの傾向が見えてくる。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。  東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。日本建築学会・編集委員会顧問。 ブログ『建築雑誌オールレビュー』を主宰。日経産業新聞『目利きが斬る・住宅欄』に寄稿。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『建築家という生き方』(共著、日経BP社)、 『ありえない家』(日本経済新聞社)、『建築産業再生のためのマネジメント講座』(共著、早稲田大学出版部) 、 『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)ほかがある。


BackNumber


Copyright (c) 2009 MERCURY Inc.All rights reserved.