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スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2012年5月29日

第68回メジャーセブンの防災対策

 東日本大震災の後、マンションデベロッパーはどのような防災対策を講じているのか。通称「メジャーセブン」といわれる、大手7社(住友不動産、大京、東急不動産、東京建物、野村不動産、三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンス)の取り組みを、プレスリリースで調べた。

 「住友不動産」

  全物件に導入(防災備蓄品、家具固定用下地補強、ホーム保安灯)

  規模等に応じて導入(非常用発電機、防災井戸、液状化対策など)

 「大京」

  停電時にエレベーターを稼動させる発電設備を導入。

  防災備蓄品の内容を大幅に増加。

  液状化対策マニュアルを策定。

 「東京建物」

  新「Brillia 防災対策ガイドライン」を導入。

 「三井不動産レジデンシャル」

  マンション防災基準を強化。

 「三菱地所レジデンス」

  「ザ・パークハウス」の災害対策基準を強化。

 なお、「東急不動産」と「野村不動産」に関しては、物件単位の取り組みではヒットしたが、会社全体の取り組みとしてはヒットしなかった。

 この中で注目したいのは、三井不動産レジデンシャルと三菱地所レジデンスの取り組みである。

 三井不動産レジデンシャルの「マンション防災基準強化策」には、次のような対策が盛り込まれている。

 (1)災害発生時に居住者の生命や財産を守るための対策

   a 高さ60m超の超高層マンションに免震構造を採用

   b 超高層マンションで長周期地震動に対応

   c 非常用エレベーターには、耐震クラス「S」(最上級)を採用

   d 家具転倒防止対策の充実

 (2)災害発生後に居住者のライフラインを確保するための対策

   a 非常用電源の確保(最低でも3日分)

   b水の確保(飲料水1日分、共用トイレ3日分)

   c 液状化対策(ライフライン確保、バリアフリー導線確保)

 (3)災害発生後に各居住者による共助活動を円滑にするための対策

   a サポートポスト(防災倉庫)の設置

   b 防災備品(カセットガス発電機、非常用トイレ、救助道具など)の備蓄

   c 管理会社を通じた住民の防災活動サポート

 一方、三菱地所レジデンスによる、「ザ・パークハウス」の災害対策基準の強化策は次のような内容で構成されている。

 (1)一般物件

   a 条件にあわせた構造選択(耐震構造、免震構造他)

   b 防災倉庫設置(含マンホールトイレ)

   c 非常時給水設備(直結共用水栓、飲用水浄化装置)

   d 一定の条件を満たす高層物件共用部の非常電源確保

 (2)超高層物件

   a 免震構造や制振装置等を原則採用

   b 非常電源確保(非常発電機の稼働時間増 他)

   c エレベータの災害対応(非常電源及び長周期地震動センサー)

   d 一般用給水ポンプ非常電源確保。

 (3)湾岸物件

   a 隣接防潮堤の高潮や津波に対する対応基本条件開示

   b 液状化への対応基本条件開示

   c 建物本体構造液状化対策

   d 液状化発生時の外部設備配管更新対策

 (4)面開発物件

   a 地域防災倉庫設置

 このような取り組みが、業界全体に広がって、「マンションの耐震性」が大きく向上することを期待したい。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。  東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。日本建築学会・編集委員会顧問。 ブログ『建築雑誌オールレビュー』を主宰。日経産業新聞『目利きが斬る・住宅欄』に寄稿。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『建築家という生き方』(共著、日経BP社)、 『ありえない家』(日本経済新聞社)、『建築産業再生のためのマネジメント講座』(共著、早稲田大学出版部) 、 『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)ほかがある。


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